「誰のためでもない、赤ちゃんのためや」

全身を見ていく中で、胃を見始めた時、夫さんの表情が引き締まった。胃が、通常より大きかった。そして、通常はないはずの丸い膨らみが、胃から腸の間にある十二指腸という場所に見えた。 ダウン症があると発生率が少し上がる「十二指腸狭窄」があるかもしれない。

「ここね」

夫さんの顔が引き締まった 撮影/河合蘭

夫さんは丁寧に説明を始めた。

「赤ちゃんはお腹の中で羊水を飲んでいるんです。でも、それが胃と、この丸く膨らんだところに溜まってしまっているみたい。あとで絵を描いて説明しますけれど、もしかしたら、生まれてから新生児手術の対象になるかもしれません」

女性が出産を予定している病院は、大きな有名病院ではあったが、新生児の手術はできなかった。

「赤ちゃんの病気は、何もわからないまま生まれたら、生まれてからバタバタする。赤ちゃんだけ別の病院に送られて、ママと離れ離れになることもありますが、この子は、せっかくこうして検査を受けているのですから、それは避けたいですよね。」

この狭窄は、かかっていた病院の超音波検査では見つけられなかったものだが、夫さんが詳細な報告書類を作ってくれると聞いて、女性も安心した。こうして50分間の超音波検査が終わると、そのあと夫さんと遺伝カウンセラーによる詳しい説明とカウンセリングか行われて転院先もほぼ決まった。

「病院って変えてもいいんですよね」という女性に、夫さんは言った。

「もちろんです。これは誰のためでもない。赤ちゃんのためや

赤ちゃんのために病院を変わる。そう言い切ってくれることで、迷いは一気になくなる 撮影/河合蘭