乙武洋匡、本格的練習スタート

「いよいよ本格的な練習のスタートです」

遠藤氏がそう言いながら見せてくれたロボット義足だが、小西氏が担当する外装のデザインはもちろんこれからで、新しく装着された部品がむき出しになっていた。だが、むき出しであるがゆえに、ロボット義足であることがとても強く実感できる。

私の目は膝の部分に釘付けになった。「膝継ぎ手」と呼ばれるパーツだ。膝継ぎ手とは私のような人用の大腿義足に使用する部品で、片方の手のひらに収まるほどの大きさのアルミ製の円柱の中に、センサーとモーターと電子回路が組み込まれている。これこそが、ロボット義足の中枢部だ。膝継ぎ手をオンにすれば、歩くときに地面を蹴るのを助けてくれるだけでなく、坂道や階段を上ったり立ち上がったりするときにも大きな力を発揮してくれるのだという。

この義足は「シュービル(SHOEBILL)オトタケモデル」と命名されていた。シュービルはハシビロコウという、コウノトリの仲間の鳥の英名だ。大きな嘴が特徴的で、立ち姿が堂々としている。最近はそのビジュアルが人気で、上野動物園をはじめ全国の動物園でちょっとしたブームになっているそうだ。命名者は遠藤氏だが、彼は大の動物園好きで、自分たちで開発した義足にはかならず鳥の名前をつけているそうだ。

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実際に外装がついたら、どんな外観になるのだろうか。「ハシビロコウ」をスマホで検索しながらイメージを膨らませていると、遠藤氏が話しはじめた。

「膝折れが起きにくいようにするため、膝継ぎ手を普通の人の膝裏ぐらいの位置に持っていきました。沖野さんからの提案をヒントにしたんですが、両手がない乙武さんの安全性をできるかぎり担保するためです。その分、バッテリーを脛部に置くなどパーツを前に移動させ、人のシルエットに近づくようにしました。ただ当面は、膝継ぎ手はオフで練習しましょう。まずは膝が曲がらない状態で、ロボット義足に慣れてもらうところから始めたいと思います」

北村がいつものように、私のズボンの裾をあげてソケットをはめる。遠藤氏がシュービルをソケットに装着する。スイッチを入れると膝に組み込まれたセンサーが作動し、「ピコーン」とスーパーマリオのような機械音が鳴る。もうSFの世界だ。

どんなデザインになるのだろう

そのときの私は、森川さんがはじめてハンディを手にしたときと同じ表情をしていたにちがいない。また少し身長が高くなって恐さが増すだろうが、きっと練習すれば慣れてくるはず。このロボット義足でスタスタと歩き、みんなを「おおっ!」と言わせる光景を思い浮かべてはニヤついていた。

「ロボット義足を使いこなしている姿を映像に撮りたいですね。ソファに座っている乙武さんが立ち上がって玄関まで歩いていく、というような。まるで健常者のような生活をしている姿が見せられたらおもしろいと思うんです」

遠藤氏の言葉に、私は笑顔で応じた。

「いいですね! 想像しただけでワクワクしますね」

構成/園田菜々

次の公開は6月30日です

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