「乙武義足プロジェクト」が進行している。「もしロボット義足で四肢欠損の私が歩けるようになったら、脚を失って失意の底に沈んでいる人に、これから義足を使うことになる人に、もしかしたら障害以外の困難を抱えている人に、大きな勇気を届けられるかもしれない」。乙武氏はそう語り、連日、義足歩行のトレーニングに励んでいる。

前回に続きデザイナー・小西哲哉氏の仕事ぶりを乙武氏がリポートする。小西氏にとって義手ユーザー・森川章さんとの出会いは、このプロジェクトに取り組むうえでの原動力になっているようだ。

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機械に右腕が巻き込まれ

3人がハンディの開発に取りかかる半年前、森川さんは当時働いていた石鹸工場で機械に右腕が巻き込まれ、肘から先がバラバラになってしまった。なんとか再生しようと治療を受けたがうまくいかない。「動かないのなら、いっそのこと落としてください」と医師に伝え、最終的に切断手術に踏み切った。

しかし、義手という選択肢を選んだものの、森川さんにはどうしても受け入れられないことがあった。人間の肌に似せた義手を着けることが、なんだかこそこそ隠れているような気がしていやだったのだという。

そんなとき、日本の3人の若者が3Dプリンターでメカニックな外装の義手を作り、ダイソンアワードを受賞したことを知る。ネットで画像を検索すると、いままでの義手のイメージを一気に吹き飛ばすようなデザインだった。

「この義手ならつけてみたい。3人に会ってみたい」

その気持ちが出発点となり、3人との面談が実現したのだった。

「写真で見るよりずっとすばらしい。親指の付け根のふくらみとか、手のひらから手首までの曲線とか、とてもリアルで美しいしなあ」

森川さんははじめて目にしたメカニックな義手に対する熱い気持ちを語り、「これからはなんでも協力します」と3人を激励した。3人は、自分たちが開発した義手の方向性に自信を持った。

写真右から、森川氏、デザイナーの小西氏、機械設計の山浦博志氏 写真提供/小西哲哉