円高懸念、再び…日米欧「緩和バトル」のいまとこれからの正しい見方

日銀・黒田総裁に焦りあり
唐鎌 大輔 プロフィール

煮え切らない日欧を尻目にFRBは粛々と利下げ

YCCの枠組みにおいて日銀がこうした金利低下圧力を押し返し、レンジ下限(今は▲0.20%)を守るには国債買い入れを減少させる必要がある。しかし、オーバーシュート型コミットメントで「生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベース(MB)の拡大方針を継続する」と約束している以上、国債買い入れの減少はあまり派手に行えない事情がある。

要するに、「金利面での緩和意欲を強調すればするほどMBの拡大が難しくなる」という葛藤があるため、現行枠組みのままでは露骨な緩和アピールをしにくいという自己制約がある。

 

このように見ると、ECBや日銀はFRBの利下げがもたらすだろう自国通貨高圧力を何とか和らげたい立場にあるが、既に伸び切っている政策発動の余地から思い切った動きが取りづらい状況にあることが分かる。両中銀ともに派手な緩和アピールが自傷行為として跳ね返ってくる状況があり、その煮え切らない態度を尻目にFRBが淡々と利下げを敢行する展開が予想される。

その際に想定される為替相場の反応がドル安であることに大きな違和感はない。今は「どれくらいドル安になるのか」という水準感を思索する段階であって、方向感についてはドル安・円高・ユーロ高で問題ないと筆者は考えている。ただし、欧州が政治的なリスクを内包する分、3通貨の強弱関係は今後1年で「円>ユーロ>ドル」になるのではないかと予想している。