円高懸念、再び…日米欧「緩和バトル」のいまとこれからの正しい見方

日銀・黒田総裁に焦りあり
唐鎌 大輔 プロフィール

縛られる日銀

もっとも、それでも通貨高によって自身が管轄する経済・金融が毀損しているという事実があれば、アリバイ作りと言われても何かはやらねばならないのが中央銀行である。実際、6月10日、ブルームバーグとのインタビューに対し黒田日銀総裁が大規模な緩和を行う余地があると口にしているのはそのような文脈からだろう。カードの浪費だと分かっていても動かなければならない辛い事情が日欧の中銀にはある。

 

▲0.40%がそのままダイレクトにチャージされるECBは利下げ余地という意味では日銀よりも厳しい立ち位置にあると言えるが、日銀にはECBと異なりイールドカーブコントロール(YCC)やオーバーシュート型コミットメントという奇怪な現行枠組みの制約がある。

まず、YCCでは現在、10年金利についてゼロ%を境として±20bp程度の変動レンジを与えられている。しかし、6月に入ってからの米金利低下を受けて▲0.10%を割り込む動きが続いている。今後、FRBが複数回の利下げを実施した場合、▲0.20%を試す動きが活発化するだろう。

財政黒字のドイツと単純比較すべきではないが、ドイツ10年金利は5月末から▲0.20%を割り込み、さらに下を目指す動きが強まっている(下記図)。ユーロ圏や日本への金利低下圧力は真っ当に考えれば強まる方向にある。

ここでオーバーシュート型コミットメントとのバッティングが生じることになる。