円高懸念、再び…日米欧「緩和バトル」のいまとこれからの正しい見方

日銀・黒田総裁に焦りあり
唐鎌 大輔 プロフィール

日本が直面するシナリオ

ついては「次の一手」として考えられるのは利下げよりも先に量的緩和、より正確には拡大資産購入プログラム(APP)再開の方が可能性が高いようにも思われる。万が一、利下げに踏み切るにしてもそれは副作用を和らげる「軽減策(mitigating measures)」とセットであろう。

実際、6月7日の記者会見でドラギ総裁はマイナス金利の期間やフォワードガイダンスの延伸が金融機関の収益を毀損し、貸出の妨げになるという点について非常に長い議論(a quite long discussion)があったと述べ、副作用へ配慮を滲ませている。利下げに限らず(利下げならば特に、だが)、「次の一手」は金融機関への配慮含みで行われる可能性が高い。そして恐らく、こうした煮え切らない挙動はFRBとの緩和競争上、不利に働く可能性が高いだろう。

 

なお、現状のユーロ/ドル相場は過大評価とは言えず、むしろ購買力平価(PPP)である「1.20」程度に照らせば過小評価といった方が実情に近い。ECBは通貨安誘導するにしても、その出発点に恵まれていないように思える。

なお、こうしたECBとFRBの関係はそのまま日銀とFRBの関係にも当て嵌まる。

日銀の黒田東彦総裁日銀の黒田東彦総裁〔photo〕gettyimages

議論の展開はECBと全く同じで、今後FRBが利下げ局面に入ったとしても日銀がこれに付き合う余地はない。

厳密にはECBであれ日銀であれ、利下げ余地の有無にかかわらず「FRBが利下げ局面に入った」という条件の下では程度の差こそあれ通貨高圧力は不可避というのが変動相場制の摂理だと筆者は考えている。