トランプの「思惑通り」
ここに来て、急に米国の利下げの議論が加速している。この見方を急速に進行させたのは、5月末に発表された弱い耐久財受注に加え、6月初めの悲惨なISM製造業景況感指数(トランプ政権発足後最低)だろう。
図 米ISM製造業各種指数の推移
加えて、小売りや中古住宅といった内需の肝となる指標も軒並み悪化しており、深刻な状況になりつつある。基本的にはすべての分野で米景気は鈍化のトレンドが形成されてしまっていると見て間違いない。
しかし、である。
何か腑に落ちないというか、違和感が拭えない。本当にこのまま景気は悪化へと向かい、株価もそれを追うように下落へと一直線に向かっていくのだろうか。この違和感について考えてみると、最終的に行き着くのは「やけに攻撃的なトランプ政権が不可解」という点になる。

トランプ大統領といえば、以前からFRBに対して強硬に引き締め政策を止めろ、こんな政策を続けるFRBは無能だとケンカ腰ではっきりと反対の意思を表明し、対立構造を演出してきた。
ビジネスマンとしての経験を背景に、景気後退につながる事象を一切排していく姿勢を貫いていた。その結果としてFRBのハト派転換、利下げの示唆といった態度の軟化を引き出したのだとしたら、それは彼の思惑通りだろう。