「報道しているのは全く全部が本当ではないので。全部真に受けないでください」

一方、これは昨年、東京・目黒区で、5歳の女の子船戸結愛(ゆあ)ちゃんが虐待死した事件で逮捕された母親・優里容疑者が近所の人に語っていた言葉だ。

この事件は2018年1月下旬から3月にかけて母親は再婚した夫の船戸雄大容疑者と共に結愛ちゃんに繰り返し暴行し、十分な食事を与えないなどして死亡させた疑いが持たれている。

「全く全部が本当ではない」ということは「一部は本当だ」ということだ。そこに僅かながらの逡巡を見る。のちに暴行したことを認めた。

自分を守るために夫と同一化

「自分の立場が危うくなるのを恐れ、夫に従い見て見ぬふりをした」

夫を擁護する発言は自分の身を守るため。あまりに自分勝手、子どもを連れて逃げる道もあったのではないかとの指摘もあるだろうが、DVの恐怖の中で、思考も動作もフリーズしていく。

「当初は思っていませんでしたが、現在、過去を振り返るとDVだったのかなと思っている……」

千葉県野田市の小学4年生栗原心愛(みあ)さんが虐待死した事件での公判が始まった。

母・なぎさ被告は夫・勇一郎被告が心愛さんに冷水シャワーを浴びせ続けるなどした虐待を止めなかったほか、自らも食事を与えなかった“傷害ほう助”の罪に問われている。

弁護人の問いに対して、なぎさ被告は上記のように答えている。

公判では栗原なぎさ被告が夫の勇一郎被告から、ひざ掛けを口に突っ込まれるなど虐待を受けていたことも明らかにされたが、しかし、それをDVと認識することさえできていないという、典型的なパターンである。

さらに、弁護人から 「勇一郎被告から『これをやって』など指示されたことはあるか?」「勇一郎被告から言われるとどんな気持ちになる?」と聞かれると、

「絶対やらなくてはいけない…という気持ちになる」

とし、「断ることはできるか?」との問いにはこう答えている。

「ありません……」「怒られると思ったからです」

心愛さんの事件では、母親が勇一郎被告に送ったラインの文章も話題になった。

「(心愛さんが)勝手に部屋から出て飲み物を取りに行った…あり得ない…『お茶ください』とか何様かと……」

虐待する夫に気に入られようと、必死に同一化しようとする母親の心理が読み取れる。二人の間の親密性や一体感を確認するために、自分が対象に成り代わって発言するのだ。