紫外線を「1万分の1ミリ」で防ぐ! 最強の「日焼け止めの科学」

「匠」が世界初商品の舞台ウラを語った
リケラボ プロフィール

日に当たると「赤くなる人」と「黒くなる人」がいますが、これはUVAとUVBが当たった時に、肌の反応の起こりやすさが違うためです。いずれにしても、日焼けによってシミができたり、年単位でシワやたるみにつながったりと、日焼けは肌の老化の原因になります。

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日焼け止めに書かれている「SPF」は、赤くなるのをどれだけ防ぐかという指標で、「PA」は黒くなるのを防ぐ指標です。「SPF50+」と「PA++++」は、日本における最高レベル。新商品の「ビオレUV」はこのレベルです。

──では次に、「日焼け止め」のメカニズムについて教えていただけますか。

日焼け止めに応用されるUV防御剤には、「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」の2種類があります。

紫外線吸収剤は、有機化合物の構造を持っていて、紫外線のエネルギーを吸収し、紫外線が皮膚にダメージを与えるのを防ぎます。一方、紫外線散乱剤は、酸化亜鉛や酸化チタンが用いられ、紫外線を散乱・反射させることで、紫外線の影響を防ぎます。

紫外線吸収剤に含まれている成分は、「メトキシケイヒ酸オクチル」や「エチルヘキシルトリアゾン」など、化学系の学部出身者でもめったに耳にしない成分ばかり。化粧品などの成分表示に使用している名称と化学名は異なりますので、入社してから学びます。

──「日焼け止めは技術的にクセがある」と言われているそうですが、それはなぜですか?

日焼け止めに使用してよい成分が限定されているからでしょうか。紫外線散乱剤に使用してよい成分にいたっては、2種類しかありません。

それに加え、人気のあるジェルタイプに紫外線散乱剤を入れるには高度な技術が必要です。紫外線吸収剤には固体の吸収剤と液体の吸収剤とがあり、化粧品に配合する際には固体の吸収剤を液体の油に溶かしてからでないと均一に配合することができません。また、一度溶けても、結晶化してしまって商品にならないこともあります。

非常に課題が多いジャンルなので、やればやるほど「こんな可能性もあるんじゃないか?」と新たな課題が見つかります。なので、専門性が高く奥が深い分野だと思うし、そこが面白いですね。

毎日つかってもらわないと、意味がない。

──今回の研究において、こだわったポイントはどこですか?

日焼け止めって、毎日使っていただかないとダメなんですよ。紫外線をしっかり防ぐために必要なものなので。

だから、「つけ心地の良さ」には、徹底的にこだわりました。正直、使用感を度外視すれば、アプローチの方法はいくらでもあります。

ただ、つけ心地を維持するとなると、ハードルはぐっと上がります。「どこに目標を置くか」で、研究の難しさは変わりますね。理論値追求も行っていますが、「お客さまにとってそれが意味があるのか」ということを、常に意識しています。

──お客さまの喜びが、福井さんの喜びにもつながっていますか?

そうですね。実際に使ってもらって、「焼けなかった」という声をいただけると嬉しいです。

研究過程の中にある、お客さまの声をダイレクトにもらう機会が非常に重要だと感じています。この機会がなければ、自分の評価とお客さまの評価との間に乖離ができてしまうからです。

私たちの研究結果はお客さまが使う商品に反映されますから、「自分の感覚は独りよがりではないか?」と振り返るようにしています。

──今回の開発では「他部門・他分野との協業」が大きなターニングポイントとなっていますが、花王では、他分野との協業はよくあるのですか?

機会は多いですね。ただ、離れた場所にいるとスムーズに意思疎通を行うのは難しいです。今回うまくいった要因の1つには、さまざまな分野のメンバーを集めたプロジェクトチームが結成されたことがあると思います。全国各地の研究所から、さまざまな分野のエキスパートが集まって、同じ場所で毎日一緒に研究できるようになりました。