紫外線を「1万分の1ミリ」で防ぐ! 最強の「日焼け止めの科学」

「匠」が世界初商品の舞台ウラを語った
リケラボ プロフィール

ウォーターベースの日焼け止めを開発した当時、肌に塗った日焼け止めがどうやって紫外線を防止しているのかは目で見えていませんでした。

日焼け止めを塗っても日焼けしてしまう原因を突き止めるためには、とにかく塗膜を観察しなければと、まずは日焼け止めの塗膜を可視化させるための研究が始まりました。

「これまで目で見えなかったものが見えるようになる」というのは大きな発見です。ジェルタイプの日焼け止めは、O/W型(oil in water)という仕組みで、「水の層」に油のUV吸収剤を入れることで、みずみずしい使用感を可能にしています。

しかし、肌に塗るとその「水の層」が揮発してしまい、10分の1mm〜100分の1mmというミクロレベルの隙間ができることが分かったのです。これが塗りムラです。

──「塗りムラ」の原因を突き止めた後「ビオレUVアクアリッチ」が完成するまで、どのような経緯があったのでしょうか?

ミクロレベルの隙間を埋められそうなアイデアをいろいろと試し、改良を重ねていきました。ターニングポイントとなったのは、他の分野の研究チームが開発した「カプセル技術」を応用したことです。

この「カプセル技術」を応用して、水にも油にもなじむ紫外線防御剤を内包したカプセルを調合することに成功しました。そして、このカプセルの大きさを、10,000分の1mmレベルのサイズまで小さくしました。

塗りムラの隙間は10分の1mm〜100分の1mmです。だから、この隙間をムラなく覆うためには、ここまで小さくする必要があったのです。

UV顕微鏡でミクロレベルの観察を行い、花王の従来品と塗膜の状態を比較すると、従来品は紫外線防御剤を含む塗膜の状態にムラがあるのに対して、開発品はほとんどムラがなく、均一な塗膜の状態であることが分かる
UV顕微鏡で見た肌の塗膜状態。同社従来品では、肌理(きめ)の部分に隙間が生じてしまっているのに対し、開発品は隙間がない。これは従来の塗膜均一性の評価装置では、観察できないそう

──7年かけて開発されたと聞きました。研究期限が設けられている場合もありますが、このプロジェクトに制限はなかったのですか?

もちろん目標は設定していましたが、「いつごろ技術が完成するか」という目処は、なかなか読めないものですね。

そもそも、結果が出るかも分からない。「こういう風に作ろう」と最初から予定していたのではなく、「これを作ってみたらどうだろう?」と次々と試していくうちに、新技術にたどり着いた、という感じです。

日焼け止めは、奥が深い研究ジャンル。

──そもそもの話になるのですが、「日焼け」のメカニズムを教えてください。

日焼けを起こす紫外線には、UVAとUVBという波長の違うものが存在します。

UVBは波長が短い紫外線で、炎症を起こして赤くなります。一方、UVAは波長が長い紫外線で、肌がダメージを受けてメラニンが活性化し、メラニンが肌の表面に出てくることでゆっくり黒くなるという仕組みです。