木更津市が「電子地域通貨」導入に挑んだワケ~地域衰退を止める秘策

「アクアコイン」は現代の藩札になるか
我妻 弘崇 プロフィール

君津信用組合地域通貨課が説明する。

「“金融を通じて地域社会に奉仕する”という当組合の経営理念から、地域経済の活性化や地域のキャッシュレス環境の整備のために「アクアコイン」は必要であると考え、取り組みを開始しました。初期投資やランニングコストを早期に回収することは困難であることも承知しています。

しかし、地方経済は、何もしなければ衰退していくのは明らかです。地域の金融機関として、手をこまねいてはいられないとの思いから決断しました。地域のお金を地域で回す、その意義に市や商工会議所が賛同してくれたことも背中を押してくれました。我々は、「アクアコイン」を預貸金事業に次ぐ第3の柱として取り組んでいます」

地元で集めた預金を、地元のためになる融資に利用してもらうことで収益を得るビジネスモデルである信用組合は、地元経済と一蓮托生だ。パイそのものが縮小すれば、信用組合がそこで暮らす人々に、質の高いサービスを提供することも難しくなる。電子地域通貨には、民間企業が仕掛ける「〇〇Pay」とは、一線を画す事情がある。「流行りものに乗っかっているだけじゃないの?」、その考えは見当違いだ。

「「さるぼぼコイン」のサービスを弊社が開始(2017年〜)して以降、自治体の方からの問い合わせも少なくありません。ですが、大前提として金融機関が中心となり、長期的な視野を持たなければ、電子地域通貨のインフラを構築することはできないでしょう。社会貢献性の高いプロジェクトゆえ、地域愛も求められます。本当にやる気のある地域でなければ、安易に手を出さない方が賢明だと思います」

そう川田氏は微苦笑する。地域愛については、「大丈夫」と木更津市産業振興課・鈴木さんは笑う。

「木更津市は、沿岸部に自衛隊の駐屯地があり、近隣市に比べると工場が少ないため、昔から税収入が少ない……つまり財政的にあまり豊かではない地域なんですね。だからこそ、内側から自分たちで盛り上げていこうという気持ちを持った市民が多い。アクアコインは、コミュニケーションツールとしての機能も高めていく予定です。新しい市民が増えることで、旧住民との軋轢が生まれることも珍しくありません。ですが、アクアコインを介すことで交流を生むようなサービスやイベントも手掛けていきたい」

木更津駅前にはノボリが〔PHOTO〕筆者撮影

「内部通貨」としての電子地域通貨の可能性

例えば、都会にいればUber Eatsのようなフードデリバリーサービスに困ることはない。だが、すべての地域がそうではない。誰かがフードを届ける、その対価、ボーナスとして電子地域通貨を付与する。そういう地域の未来が、独自のキャッシュレス機能を持つことで広がるかもしれない。