木更津市が「電子地域通貨」導入に挑んだワケ~地域衰退を止める秘策

「アクアコイン」は現代の藩札になるか
我妻 弘崇 プロフィール

ただし、事業者がアクアコインから「円」に換金する場合、1.8%の換金手数料(商工会議所の加盟店、または君津信用組合の組合員の場合は1.5%)が発生してしまう。クレジットカードの手数料と比べれば安いが、なかなか首を縦に振れない事業者もいることはたしかだ。そこで商工会議所、君津信用組合が、「クレジットカードの手数料とは違い、市域内で回すお金につながる」ことを説明し、事業者の理解を深める努力をしているという。

サービス開始から約8か月が経過。6月11日時点で、これまでの総チャージ金額は約1億3400万円。うち約1億2700万円が利用されている。前出の川田氏によれば、「月間で2~3億円流通(地域循環)すれば、事業として安定した運営ができる計算になります」とのことだ。つまり、現時点では大きな赤字となる。だが川田氏は、

「地域通貨の仕組みのようなインフラは、数ヶ月で損益分岐点をむかえることはなく、3~5年レベルで普及させていく計画でやっています。先行投資が大きいがゆえに、大企業でしか取り組みづらい状況が生まれている。お金とビッグデータがより東京に集中していくことを考えれば、いまのうちからこうした仕組みを小口化して地域に展開する意義があると考えている」

と話す。

たとえば実際、LINE Payは決済インフラの先行投資に莫大なコストをかけ、2019年1~3月期連結業績の最終損益は103億円の赤字。LINE Payへの投資がかさんでいることは、決算書からも明らかだ。キャッシュレス戦争の裏では、決済インフラ戦争とも言える状況が繰り広げられている。

 

信用組合という心強い味方

現状、アクアコインの収益は、先の換金手数料のみとなる。当然、その換金手数料だけでは、アクアコインの仕組みを金銭的に下支えすることはできない。一体、財源はどうしているのか? ここで三位一体、金融機関である君津信用組合が中心となって取り組む意味が浮き彫りになる。
 
そもそも、信用組合(金庫)の役割は、中小企業や個人を対象にした組合員(会員)制度による協同組織の金融機関だ。営利を目的とせず、地域社会や会員の利益を優先する。株式会社である銀行とは違い、利益の最大化を図る必要がない信用組合は、言うなればCSV(共有価値の創造のための)経営を行っている。

信用組合(金庫)は、利益が計上された場合は、剰余金として積み立て、決算時に自治体や市民団体に寄付しているところも多い。君津信用組合は、そのお金を「アクアコイン」の開発・運営に投資しているというわけだ。地銀とは違い、信用組合(金庫)だからこそ電子地域通貨というチャレンジができる。