木更津市が「電子地域通貨」導入に挑んだワケ~地域衰退を止める秘策

「アクアコイン」は現代の藩札になるか
我妻 弘崇 プロフィール

例えば、地域の人々がクレジットカードを利用することで起きる「流出」について考えてみよう。

「アクアコイン」がプリペイド方式の決済種類であることは先述したが、現金によるチャージしか受け付けていない。クレジットカードとは紐づいていないのである。なぜ、そうする必要があるのか。それは決済時に発生する手数料数%分を、市域外に流出させないためだ。

仮にひと月で100万円の売上があった場合、そのすべてを手数料3~5%のクレジット払いとすると、毎月3~5万円が決済手数料として市域外へ流出してしまう。塵も積もれば山となる。そういった小さな流出が、地域経済にはボディブローのように鈍い痛みとなって蓄積してくるのだという。

また、「人口が減少し、高齢者が増えていくと預金量は増えますが、お金の流動性が低くなる。高齢化によって産業も生まれづらくなるため、より地域にお金が回らなくなってしまう」と、川田氏が教えるような事情があることも見過ごせない。

シンプルにまとめれば、地域でしか使えないお金を供給することで、地域内での経済の循環を活性化しようというのが、アクアコインを導入した大きな目的と言える。

アクアコインの周知も進んでいる〔PHOTO〕筆者撮影

利用者、事業者ともにメリットがある

では、実際に利用する消費者と事業者には、どのようなメリットがあるのだろうか。市域内で回す計画性があったとしても、利用者が「使いたい」と思わなければ本末転倒だろう。

「春先に、チャージをした分の3%のボーナス付与に加え、使用時に5%のキャッシュバックキャンペーンを行いました。実質8%の還元率となるので、アクアコインを使用していただくきっかけになったと思います。また、今年度から、アクアコインによる住民票交付手数料の受け入れや、アクアコインのアプリを活用した電子版プレミアム付商品券の発行など、多くの場面で市民にアクアコインを利用する機会を提供していく予定です」(木更津市産業振興課・鈴木さん)

 

さらに、「事業者にとってもメリットがある」と鈴木さんは続ける。

QRコード決済なので専用端末の導入は不要です(インターネット上の加盟店専用サイトにアクセスするだけで利用可能)。売上金の集計も不要になるなど、キャッシュレス特有の利点があります。決済手数料は、もちろんかかりません。さらに、アプリ内で店舗情報を掲載できること、先に述べたキャンペーンのような個々の商店では行えない規模の取り組みに参加できることもメリットだと考えています」(木更津市産業振興課・鈴木さん)