木更津市が「電子地域通貨」導入に挑んだワケ~地域衰退を止める秘策

「アクアコイン」は現代の藩札になるか
我妻 弘崇 プロフィール

それにしても、なぜ円ではなく、独自の電子地域通貨である必要があるのか? 導入の背景を、木更津市産業振興課の鈴木昭宣さんは次のように明かす。

「木更津市の地域経済は、大型商業施設の進出や高齢化などの影響もあり、縮小傾向にあります。活性化を図らなくては、市の経済が衰退してしまいます。市域の中でお金を回す“お金の地産地消”の手段として、地域通貨の導入について検討をはじめました

アクアコインのチャージマシン〔PHOTO〕筆者撮影

かつて木更津市は、バブルの恩恵を受け地価が数十倍~数百倍に膨れ上がった過去を持つ。1989年、都心と木更津を結ぶ「アクアライン」の着工が開始されたことで投資ブームに沸いたのだ。しかし、バブルは崩壊。アクアラインが全面開通した1997年、片道4000円(普通車/通常料金)という値段設定は、バブルの後遺症が残る利用者にとっては、あまりに高額だった。地価は暴落し、アクアラインの利用者もわずか……木更津市は、アクアラインに翻弄された町でもある。

ところが、2009年、通行料が毎日終日800円(ETC普通車)へと大幅に引き下げられると風向きが変わる。通行量は急増し、近隣に大型商業施設「三井アウトレットパーク」が誕生。次第に、木更津市は活況を取り戻し始める。この10年で、木更津市の人口は一万人ほど増加した。

 

地方経済は、底に穴が空いたバケツのよう

「人の流れが戻りつつある今、次の局面として市域内でお金を回すことが求められています。せっかく人が戻っても、市外にお金が流出してしまっては元も子もありません。テクノロジーの力を借りて、市内のお金を地域経済と地域民の中だけで流動的に回す仕組みを作る必要がありました」(木更津市産業振興課・鈴木さん)
 
アクアコインは、フィンテック事業を展開する株式会社フィノバレーが提供する電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」を利用している。高山市・飛驒市・白川村で運用される日本初の金融機関発行の電子地域通貨として話題を集めた、「さるぼぼコイン」と同様のシステムだ。

「東京に本社を置く全国チェーン店が地域に入ってくると、雇用は生まれるのですが、超過利益は地域の外に流れてしまいます。我々は、“バケツ理論”と呼んでいるのですが、多くの地方経済はバケツの底に穴が空いているような状態にある。入ってくるけど、底を突き抜けて地域外に流れているお金も多い」

そう語るのは、株式会社フィノバレー・川田修平代表取締役社長。川田氏は、地域経済は「円」を利用することによって、不必要なお金の流出を招くと指摘する。