赤字転落のホンダで吹き荒れる「内紛」の全内幕

こんな会社に誰がした?
井上 久男 プロフィール

銀行も経営介入を意識

ホンダの決算発表はこれまで副社長が行うのが慣例だったが、今年は5月8日の決算発表に八郷氏が顔を出した。

決算発表の前に、八郷氏が自ら異例の「事業方針説明」を行った。その内容は主に四輪事業の強化策の発表で、売れない派生車種の削減と、過剰な生産能力の削減を展開していくことが強調された。

 

しかし、今年2月19日に発表した組織の見直しの際に説明したものとほとんど同じで新鮮味に欠けた。同時にホンダは、英国南部のスウィンドン工場やトルコ工場での生産終了も発表。一昨年には狭山工場の閉鎖も決めている。

だが社内には「英国やトルコの生産拠点を閉鎖しても、まだまだホンダの生産過剰問題は解決しない。内製している変速機の生産能力も過剰、いずれ人員整理に手を付けないといけないだろう」との見方がある。

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こうした事態にメーンバンクである三菱UFJ銀行も経営介入を準備しているとされる。

「三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行会長は以前、三菱自動車の担当を務め、現在はトヨタの社外監査役を務めるなど自動車産業に詳しい。平野会長がホンダの行く末を心配している」(ホンダ関係者)

三菱UFJ銀行はホンダ系下請け企業に資金を貸し込んでおり、四輪事業がさらに苦境に落ち込めば、下請けが疲弊するとの危機感も強い。

現役社員が語る。

「ホンダは『末期癌患者』のようなものと言っていい。将来に期待していませんし、30代、40代の若い社員も将来がないと絶望して自発的に転職しています」

内紛だらけの社内では、不満が渦巻き、空中分解寸前と言っても過言ではない。本田宗一郎が築き上げた「技術のホンダ」に危機が忍び寄っている。

「週刊現代」2019年6月1日号より

井上久男(いのうえ・ひさお)
64年生まれ。大手電機メーカーを経て、'92年に朝日新聞社に入社。経済部で自動車や電機産業を担当し、'04年に独立。著書に『トヨタ 愚直なる人づくり』(ダイヤモンド社)、『日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年』(文春新書)など