「フェミニズム離れ」する若い女子が抱いている違和感の正体

ハッシュタグ運動から見えること
高橋 幸 プロフィール

このような日常風景の中を人々が生きていると捉える場合、「むしろ男性の方がかわいそうな場面もあるよね」、「いまだに、女性は『男社会』の被害者だと主張するフェミニストの議論は、よくわからない」という発言は、まぁ、わからない話ではない(ちなみに、これは筆者が参加したある研究会後の飲み会で、実際に若い女性が発したもの)。

では、フェミニズム不要を主張する女性たちは、具体的にどのような現状認識や理想像を持っているのだろうか。詳しく見ていこう。

 

#WomenAgainstFeminismとは何か?

日本の女性向けポピュラーカルチャーでは「フェミニズム」という語を使わないので、社会学的な分析が難しい。そこでさしあたり、同じ先進国である英語圏の事例分析を通して、上記の日本社会の現状を考えるための手助けにしたい。

分析対象は#WomenAgainstFeminism(以下、#WAFと表記)。第2期オバマ政権が確立した2013年頃から始まり、2014年の夏に注目を集めたアンチフェミニズムのハッシュタグ運動だ。#WAFは基本的には、他のハッシュタグ運動と同じように、自分がフェミニズムに反対する理由を書いた文章をSNS等で共有するものである。

当初は単純に文章を共有するだけのものだったが、「この運動を盛り上げているのは、アンチフェミニズムの立場をとる男性権利運動家のソックパペット(なりすまし・自作自演)なのでは?」という疑いが持ち上がると、#WAFはより気合いの入った運動に変貌する。

まぎれもない女性である自分たちがフェミニズムに反対しているのだということを示すために、自撮り写真(セルフィ)という手段をとったのだ。自分がフェミニズムに反対する理由を手書きのメモにし、それを持って自撮りを撮影、ハッシュタグをつけて投稿した。SNSでの顔出しの運動は、見る者に強い印象を与えるものだった。

「フェミニズムが不要な理由」の類型

では、彼女たちはどのような理由でフェミニズムに反発していたのか。

その理由を調べるため、タンブラー「Women Against Feminism」(現在は、ページが削除されている)の「アーカイブ」に蓄積されている写真で述べられている「フェミニズムが不要な理由」をコーディングした(詳細は、「若い女性の「フェミニズム離れ」をどう読み解くか:#WomenAgainstFeminism(2013-2014)の分析から」『女性学ジャーナル』(高橋幸, 2019)を参照してほしい)。

その結果、#WAFで主張されている内容は、大きく政治的・イデオロギー的にフェミニズムを批判する「アンチフェミニズム」(32.6%、数値は全体に占める割合)と、自分の「女性」としての生活実感に基づいてフェミニズムを不要と主張する「ポストフェミニズム」(67.2%)に分けることができた。