単行本が出版されたのは、翌2017年の4月。600ページ近くのボリュームで文字のぎっしり詰まった本に、昔からのオリチル(折原チルドレンの略、自ら中学生時代に私の作品を愛読していたという編集さん命名)たちは驚いたようだった。が、「基本の気持ちの部分は昔と変わらないが、大人になった自分にフィットする」と言って下さる方が多かったことは嬉しかった。また、今まで私の本など手に取ったこともない60代以上の男女の読者の方々が「久しぶりに若い頃の純粋な気持ちを思い出した」と楽しんで読んでくださったことも、嬉しい驚きだった。

エンタメの世界のトレンドは、時代と共に移り変わる。ベタな純愛物語を「クサい」「恥ずかしい」と目を背ける方たちの心の奥にも、もしかしたら「純粋に人を愛してみたい」という、普遍的な想いが隠れているかもしれない。この、今どき珍しい直球な恋愛小説が、少しでもそんな方たちの心に触れることができたなら、これほど嬉しいことはない。

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自作の妄想キャスティング

ところで、小説を書くにあたって、「成り切り手法」と共に欠かせないのが「妄想キャスティング」だ。

私にとって、小説を書くことは頭の中で映画かドラマを作るようなもの。脳内に流れているBGM付きの映像を、文字にして紙の上にアウトプットしているのだ。登場人物には、それぞれのイメージに合う実在の役者さんをキャスティングする。本作の場合も、勝手にキャスティングした俳優さんたちを各キャラクターに当てていたし、中には、舞台となった葉山や信州の安曇野の町に実在する人たちもいる。

安曇野のりんご農園が登場するが、それはこの「ゆきさん農園」がモデル 写真提供/折原みと

主人公を始めとする主要キャラクターには、各々明確にイメージしていた役者さんたちがいたが、ただひとり、優斗だけは、どうしてもぴったりはまる俳優がいなかった。それはそうだ。葉山のクラシックホテルの御曹司で、容姿端麗、一途で純な海の男……なんて、なかなかにハードルが高い。

だが、しかし!見つけてしまったのだ。最近になって、完璧に優斗のイメージに合う俳優さんを……!!

それは、2018年秋にTBS系で放送されたドラマ『中学聖日記』に出演していた新人俳優・岡田健史くんだ。

写真集『鼓動』の岡田さん