三菱地所、三井不動産、DeNA…話題の「自社株買い」が危険なワケ

株式市場に「死」をもたらす?
鏑木 邁 プロフィール

ゴマカシにすぎない

自社株買いは、企業側に余裕資金がある限り株主からも社員からも批判が出ず、当の企業も株主還元の姿勢を評価されるため、一見「三方良し」の理想的な手法に見える。

ただ本来、株式は企業活動を拡大するために、株主から資金を調達する目的で発行すべきもので、「株主のため」という名目のもとに株を買い戻す行為には、矛盾がある。中堅証券ストラテジストはこう解説する。

「自社株買いは、本質的にはゴマカシに過ぎません。例えば、買い戻した自社株をよその企業の株と株式交換すれば、単に資金を右から左に移したに過ぎない、ということになります。

そもそも、企業が競争力をつけていかなければ、この先アベノミクスが終了して金融緩和が縮小した際に、株価上昇で生まれた余剰資金そのものがなくなります。そうなれば、経営危機に陥りかねないことは目に見えています。

実際、営業利益で減益が続いているにも関わらず、目先の株主の批判をかわすために自社株買いに踏み切るケースも少なくない。コーポレートガバナンスの強化で、大規模な設備投資などのリスクのある経営判断が難しくなっているのも事実ですが、経営者は本来、決断することが仕事です。

このまま自社株買い礼賛の流れで日本企業がぬるま湯に浸かったままでは、本当の危機が来たとき、目も当てられない事態になるでしょう」

 

では、リスクが大きいにも関わらず、なぜいま自社株買いが礼賛されるのか。全国紙経済部のベテラン記者はこう分析する。

「安倍政権の下で金融庁はコーポレートガバナンスを強化する方針を決めましたが、背景には、企業の内部留保をはき出させてデフレ脱却を狙う意図があります。

このこと自体は正しいと思いますが、問題は証券業界全体が監督官庁である金融庁に逆らえないため、『自社株買いをもてはやすのはいかがなものか』と異論が唱えられないことにあります。

業界には、少しでも株価が上がってくれればそれでいいという人も多い。マスコミも一般紙は関心が無いから記事にしないし、日経新聞も、株価が上がるなら強くは批判しません。しかし、このようなただの責任回避をいつまでも投資家が認めてくれるかはわかりませんし、米国の後追い的な施策がまかり通る日本市場の国際的な評価は、下がる一方です」