三菱地所、三井不動産、DeNA…話題の「自社株買い」が危険なワケ

株式市場に「死」をもたらす?

企業が発行した株式を自社で買い取る「自社株買い」が、今年度に入り急増している。米中貿易摩擦が激化し、日本国内に独自の買い材料がない中で、株主に還元する手段として脚光を浴びているのだ。

ただ、企業の本質的な競争力向上にはつながらない。市場関係者からは「無能な経営者が経営責任をとらないためのごまかしに過ぎない」との批判も出ている。

 

株価が23%も上昇

自社株買いには、市場での株の流通量を減らすことで1株当たりの利益(ROE)を高める効果がある。

例えば、ある企業が株式を1億株発行しているとして、5000万株を自社株買いすると、単純計算で株主が持つ価値は倍に跳ね上がる。配当は課税対象となるのに対し、自社株買いは企業が市場流通量を調整するだけなので対象外なのもメリットだ。

野村証券のレポートによると、今年度に入り、5月23日時点で自社株買い発表額は前年同期比9割増の3.4兆円と急増している。

今年5月までの主要企業決算期では、国内化学メーカーの信越化学工業が3月12日に開示した自社株買いが注目された。2008年以来およそ11年ぶりの実施で、上限額は1000億円、発行済み株式総数の(自己株式を除く)3.3%と規模も大きい。購入した株式を消却し、今回分が再び市場に出回るのを予防したことも市場関係者をうならせた。

さらに、三菱地所も5月14日に初の自社株買いを発表し、株価を9%引き上げた。同業ですでに自社株買いを発表していた三井不動産と、今後実施するとの思惑から住友不動産の株価上昇につながった。ディー・エヌ・エーも5月10日に発行済み株式(自己株式除く)の26%の自社株買いを発表し、株価が23%上昇するなど、効果を見せつけた。

背景には、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化の中で、株主との対話が重視されていることがある。ある大手証券ストラテジストはこう解説する。

「かつて日本では、今より圧倒的に『企業は企業自身のもの』というイメージが強く、株主還元は後回しにされていました。要するに、いつリーマンショックのような大きな不況が来るかわからないのだから、内部留保に回すという意識が主流でした。

しかし、近年では外国人投資家の株式保有率も増えてきて、『モノ言う株主』として企業にROEを高めることを要求するケースが増えてきました。『こんな株価で株主に対する経営責任を果たしているとは言えない』とか『株価が安いままで買収されたらどうするんだ』と詰められて、目先に営業利益を高める方策がない企業は、自社株買いを選択するわけです」