共演者も仰天した、怪優・田中裕子『おしん』撮影秘話

過労で倒れ、プレッシャーに悩み…
週刊現代 プロフィール

 そうですね。ほぼ毎日、朝から晩まで撮影しっぱなし。そして、何より橋田壽賀子先生の脚本が役者にとって大変なんです。普通の撮影現場では、本番前にお茶を飲みながら、役者同士が会話をしたりするものなのですが、そんな余裕すらないのが橋田先生の作品。

私は、『おしん』前後にも橋田先生の作品に出演させていただいてますが、橋田先生の作品の現場はいつもそんな感じです。とにかく、台詞が多いですし、ひとつひとつの台詞が長い。時間さえあれば、必死に台詞を覚えます。それはベテランだろうが若手だろうが、皆同じ。

休憩中に、裕子ちゃんとご飯を食べに行っても、会話も何もなく、二人とも食べながら黙々と台本を読んでる、ってことがよくありましたね。本読みに夢中で、気付いたら全部食べ終わっているんです。

また、誰か一人が台詞を声に出すと、周りの役者さんがそれに合わせ、自然発生的に本読みが始まるなんてこともしばしば。撮影日には一日で2kg痩せてしまうこともありました。

 

演技中に気を失う

並樹 僕は初めてのドラマ出演でしたが、台本に10行もあるような長い台詞もあって、『これ、テレビドラマとして成立するのかな』と心配でした。でもやってみると、うまくハマるんです。

ただ覚えるのが本当に大変で、裕子さんに『台詞(覚えるのが)大変っすよ』って言ったら、『並樹くん、こんなにキツい仕事はそうないから』と慰めてもらいました。それでも、台詞の量が多すぎて、ストレスが溜まる。何やってても台詞が頭から離れないんですよ。

 私たちは出ない回もありますが、裕子ちゃんは出ずっぱり。たまに撮影がない日も台詞を詰め込まないと絶対に覚えられないから、本当に休む間もなかったと思います。

それに、橋田先生の脚本は、“てにをは”一つ間違えると、台詞が出てこなくなる。他の脚本だと、台詞を少し間違えても、意味を変えることなく調整していくことができるんですけどね。橋田作品だとこの“言い戻し”が絶対できない。それだけ、一つの台詞の構成がしっかりしてるということなのでしょう。だからアドリブを入れる余地もありません。

木俣 田中さんが同じく朝ドラの『まれ』('15年)に出演したとき、アドリブを連発されて現場を和ませていたという話を聞きました。橋田作品は、キャラクターががっちり固まってますが、田中さんご本人はもう少し自由に演技されたかったのかな、と。