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金正恩の“ラブコール”で見えた「暴走カード」を失った北朝鮮の行方

米朝会談から1年が経った…
昨年6月に行われた米朝会談から1年。この間、両国の関係はどのように変化したのか。そして関係は今後どのように変わっていくのか。金正恩党委員長はこの1年の間に「暴走カード」を失ったと指摘するのは、デイリーNKジャパン編集長の高英起氏である。

蜜月をアピールする金正恩

「私とトランプ大統領との個人的関係は両国間の関係のように敵対的ではなく、われわれは相変わらず立派な関係を維持しており、思いつけばいつでも互いに安否を問う手紙もやり取りすることができる」

北朝鮮の金正恩党委員長は、今年4月12日に開催された最高人民会議(日本の国会にあたる)の施政演説で上のように述べた。北朝鮮の最高指導者が国家の方針を示す施政演説で、これほど外国の元首との蜜月ぶりをアピールするのは異例である。

 

同時に金正恩氏は、

「米国が正しい姿勢をもって、われわれと共有できる方法論を探したうえで、第3回朝米首脳会談をしようとするなら、われわれとしてももう一度ぐらいは行ってみる用意がある」
「しかし、今この席で考えてみれば、なにか制裁解除問題のために、のどが渇くかのように米国との首脳会談に執着する必要がないという考えをすることになる」

と述べた。回りくどい言い方だが、つまり「米国とは対立しているが、トランプ氏とは仲がいい」という金正恩氏のトランプ大統領へのラブコールである。

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その後、北朝鮮は5月4日と9日に立て続けに二発の弾道ミサイルを発射。金正恩氏の施政演説と矛盾するような行動を見せるが、トランプ氏は、

〈北朝鮮は複数の小型の兵器を発射し、一部のアメリカ国民などは動揺したようだが、私はそうではない。私は金正恩委員長が私との約束を守ってくれると確信している〉

とツイートするなど問題視しなかった。トランプ氏からすれば、米国に届く長距離弾道ミサイルは問題視せざるをえないが、中短距離なら目をつぶるということだろう。

北朝鮮と米国は対立関係にある。しかし金正恩氏とトランプ氏の個人的関係はそれほど悪くない――これが米朝関係の現状のようだ。

昨年の6月12日、歴史的な米朝会談が開催される前は、北朝鮮をめぐる情勢が劇的に変化するかと思われたが、1年経って核・ミサイル問題で大きな進展は見られない。2月にベトナムのハノイで行われた2回目の米朝首脳会談では、決裂におわった。

それでも金正恩氏とトランプ氏が互いの蜜月ぶりをアピールしながら第3回首脳会談への含みを持たせている。北朝鮮をめぐる状況は、今しばらくこうした進展するのかしないのかわからないような状況が続くと見られる。では、なぜ米朝はそうした「膠着状態」になっていると考えられるのか。その背景を探ろう。