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原発フィーバーの東欧諸国が心配するドイツの「いびつな脱原発」

CO2は減らず、電気代はEU一高い

CO2を減らす気なら、なぜ…

EUの欧州議会選挙前の、ドイツの有権者の一番の関心事は、経済でも、難民でも、治安でもなく、気候温暖化だった。

去年より燃え盛っている子供たちのデモと、それを応援する緑の党をはじめとした「大人たち」の勢いは、すでにこのコラムでも何度か書いた。ドイツ政府は現在、石炭火力の2038年の廃止を目指して苦心惨憺しているが、デモの賛同者たちは、2038年どころか、すぐにでも火力を止めてCO2を減らさなければ、地球は滅びると主張している。

しかし、実際問題として、現在、稼働している石炭火力をすべて止めると、それだけでもっている地域の産業構造が壊れて、膨大な失業者が出る。

石炭産業が集中しているのは、ルール地方とラオヅィッツ地方だ。ルール地方はドイツ西部のライン川の流域で、かつてドイツ産業の中心となった場所。一方のラオヅィッツ地方はドイツ東部で、チェコ、ポーランドとの国境付近だ。ここも昔から石炭で栄えた地方だったが、第2次世界大戦後は東ドイツとなったので、私たちの視野から消えていた。

いずれにしても、両地域とも今でも石炭に支えられており、当然のことながら石炭火力発電所や製鉄業、化学産業などが集中している。正確に言うなら、とくにラオヅィッツの方は、石炭関連以外にめぼしい産業がないような鄙びた場所だ。だから、それを廃止して、代わりになる産業を短期間で誘致することは、極めて難しいと見られている。

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しかし、それでも石炭の採掘はやめるというのがドイツ人の意思だ。

 

そこでドイツの経済・エネルギー大臣アルトマイヤー氏は、22日、炭鉱地方の構造改革のため、2038年までに400億ユーロを注ぎ込むことに決めた。うち43%がラオヅィッツ地方に充てられるという。ただし、その400億ユーロという巨大な資金がどこから捻出されるかは明らかにされていない。

5月12日、ポーランドのOKO.pressが、「ポーランドの科学者ら約100名がドイツに脱原子力政策の再考を要請」というタイトルの記事を載せた。内容は、同国の生物科学系の学者や環境保護活動家などが、ドイツのメルケル首相、シュタインマイヤー大統領を始め、議員や環境保護団体の代表者などに宛てた書簡を紹介したものだ。

OKO.pressは、調査、および事実確認を専門とするオンライン情報サービス会社だという。要は、「地球温暖化を防ぐためにCO2を減らす気なら、なぜ、絶好調で動いている原発を止めるのですか?」ということだ。言うまでもないが、原発はCO2を一切出さない。

https://oko.press/polscy-naukowcy-i-ekolodzy-apeluja-do-niemcow-o-nieodchodzenie-od-atomu-najpierw-odrzucmy-wegiel-potem-atom/

おそらく読者もご存じの通り、ドイツは、2038年の火力廃止よりも前の2022年に、脱原発の予定だ。原発と火力が無くなると、残りはほぼ再エネだけになるので、普通に考えれば、電力の安定供給は危ぶまれるはずだが、では、どうするのかということが、ドイツでは未だにちゃんと論議されていない。

そこで、ポーランドの学者たちがしびれを切らし、「最初に火力を止め、それができてから原発を止めたほうがよいのではないか」と進言したわけだ。

ポーランドが口を出すのには、一理ある。というのも、EUの多くの国では送電線が繋がっているため、一国で需要と供給のバランスが崩れると、他の国に深刻な影響が出る危険があるからだ。特に、ポーランドはドイツに隣接しているから他人事ではない。

 

ただ、ドイツメディアは、ポーランド学者のこのアピールはほとんど無視。2日後の14日、World Neclare Newsが取り上げた(Polish academics urge end to Germany's nuclear phaseout)だけで、ドイツの主要メディアでこれを報道したのは、私の調べた限り、5月17日のDie Welt紙1社しかなかった。

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