「こんな義手が欲しかった!」

小西氏はデザイナーの立場からプロジェクトをこう振り返った。

「義手のデザインは人肌に似せたものがほとんどですが、もっと多様な選択肢があっていいはずだと思いました。私たちはメカニックなデザインという選択肢を提示しましたが、それだけではありません。日々のファッションを楽しむようにデザインを取り替えることができたり、義手の甲の部分に部品を取り付けて電話をすることができたり、SuicaなどのICカードを埋め込まれていたり、健常者にはできない楽しみが実現する可能性も秘めているんです」

写真左よりデザインの小西哲哉氏、プログラミングの近藤玄大氏、機械設計の山浦博志氏 写真提供/小西哲哉

義手の未来を考えると彼の胸は高鳴ったが、そういう義手が「必要とされているかどうか」がわからなかった。当事者にとっての義手はあくまで実用的なもので、楽しむためのものではなかったからだ。

出会ったばかりの福祉の世界でハンディは受け入れられるのか、3人は不安を感じていた。だが、デザイナーやエンジニアとしての自分たちは評価された。これでいったん終わりにしてもいいのではないか。そう気持ちを整理しかけたとき、ある1通のメッセージが届いた。

「人前でも気にする事なく堂々とふるまえるハンディは魅力に溢れています。一度見せていただくことができませんか」

依頼の主(ぬし)は大阪在住の森川章さんといった。入院中で近々右腕を肘の先から切断する予定だが、労災で認められている筋電義手を使うかどうか悩んでいるとも書かれていた。それは、当事者の声を聞きたかった3人にとってもありがたい申し出であり、学会で大阪に集まる予定を利用して森川さんのもとを訪ねた。

はたして、受け入れてもらえるのだろうか。

森川さんは実物のハンディを目にするやいなや、「うおお!」と大きな声を上げた。ずっと欲しかったおもちゃを買ってもらった少年のような喜びようである。さっそく装着し、自分の肘から伸びる義手をまじまじと見つめてこう言った。

僕、こういうのが欲しかったんだよ


構成/園田菜々

次回は6月23日公開予定です

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