国際的アワードで世界第2位

小西氏の経歴を紹介しよう。
 
1985年、千葉県生まれの宮城県育ち。千葉工業大学大学院でプロダクトデザインを学び、卒業後はパナソニックでビデオカメラやウェアラブルデバイス(身体に装着して利用することを想定して開発された端末)のデザインを担当していた。

入社3年目の2013年春のこと。同期入社の山浦博志さんから「いっしょに義手を作らないか」と誘いを受けた。山浦さんは、同じ東京大学の研究室の後輩でソニーのエンジニアだった近藤玄大さんの発案により、筋肉の微弱な電気信号(筋電)で操作できる筋電義手を作りたいと考え、デザイナーを探しているところだった。小西氏はこの誘いに乗った。

3人の念頭には「ジェームズダイソンアワード」があった。この賞は、掃除機で有名なダイソンのジェームズダイソン財団が運営し、日常の問題を解決する次世代のデザインエンジニアリング作品を顕彰する国際的なアワードだ。国際最優秀賞には3万ポンド(約405万円、当時)の賞金が与えられる。ただ、対象が学生もしくは卒業・修了後4年以内の卒業生に限定されていて、応募するのであれば、この年が彼らにとってはラストチャンスだった。

3人はチームで挑戦することを決意した。プログラミング・近藤玄大、機械設計・山浦博志、デザイン・小西哲哉、3人は息を合わせてゴールを目指し、7月、筋電義手「ハンディ(handiii)を完成させた。

3人で完成させたハンディ 写真提供/小西哲哉

筋肉からの信号を読み取る筋電センサーを内蔵し、皮膚の表面を流れる電気的刺激の計算にスマートフォンを使用することでコストを抑えた。義手の構成は、すべて簡単に変更可能、さらに3Dプリンターで複製可能。プロトタイプ(原型機)の材料費は3万円というから驚きだ。

デザイン的にもいままでの義手の常識を覆すものだった。「人間の手に近いような色や質感」とはかけ離れたロボットのような外装が、ほんものの手ではないということを、むしろ強烈にアピールしていた。

ハンディは「ジェームズダイソンアワード2013」で、世界第2位の評価を受けた。上位入賞は日本初の快挙だ。国際最優秀賞とはいかなかったが、3人の目的は十分に果たせたと言えるだろう。