乙武義足プロジェクト」が進行している。「もしロボット義足で四肢欠損の私が歩けるようになったら、脚を失って失意の底に沈んでいる人に、これから義足を使うことになる人に、もしかしたら障害以外の困難を抱えている人に、大きな勇気を届けられるかもしれない」。乙武氏はそう語り、連日、義足歩行のトレーニングに励んでいる。

多くのプロフェッショナルが参加しているこのプロジェクトだが、今回はデザイナーにスポットを当てる。これまでもロボット義足のデザインを手がけ、国際的な評価も高いプロダクトデザイナー・小西哲哉氏の今までの取り組みを乙武氏がレポートする。

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デザイナー・小西哲哉氏との出会い

すべてが順調だった。
10月4日、もう一人のプロジェクトメンバー、デザイナーの小西哲哉氏が遠藤氏とともにわが家を訪れた。すっと通った鼻筋に切れ長の目、「顔まで自分でデザインしたかのようですね」という私の軽口を、小西氏は笑顔で受け流す。

小西哲哉氏

「どんなデザインにしましょうか?」

練習が終わると、黙って見学をしていた小西氏が口を開いた。考えたけれど、とくにこれといったイメージは湧いてこない。ぼんやりとした回答で申し訳ないなと思いつつ、「とにかく、スタイリッシュな感じで」とだけ答えた。

彼は「了解です」と慣れているように頷く。

「乙武さんは何色が好きですか?」

この質問にはすぐに答えられた。黒。Tシャツにせよ、セーターにせよ、クローゼットの中身は黒ばかりだ。さらに黒ベースにどこか赤を取り入れているデザインもお気に入りで、財布や車椅子に装着している腕時計も、まさに「黒×赤」の組み合わせだった。

でも、小西氏から「靴はどうしますか?」と聞かれたときは困ってしまった。これまでの人生で靴選びなどしたことがなかったから。革靴を履いてみたい気持ちはあったが、まずは義足初心者として最も歩きやすいスニーカーから試してみるのがいいという。かつてはバスケ部でならした遠藤氏にお勧めを聞いてみた。

「人気があるのはナイキとかですけど、一般的なスニーカーってつま先と踵では靴底の厚さが変わってくるんですよね。そういうスニーカーを履くと、靴を履かない状態で練習していたときと微妙に感覚のズレが生じてきてしまうんです」

いくらデザインがよくても、それは厄介な話だ。

「そういう意味では、コンバースのスニーカーはつま先と踵の厚みがあまり変わらないので、義足使用者で履いている人は多いかもしれないですね」

こうして私の「ファーストシューズ」は、コンバースの黒に決まった。それにしても、服装や小物を選ぶように、義足のことを考える日が来るとは思ってもみなかった

乙武氏の選んだ黒のコンバース 撮影/森清