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栄養表示だらけ「サプリメント」みたいなコンビニ食の正体

現代社会を漂う「エビデンスの幽霊」

コンビニ食は難しい

当直のたびに、夕飯になにを食べればよいのか真剣に悩んでいる。

筆者は生活習慣病領域、なかでも糖尿病を専門とする医師だ。専門分野の診療では、恐れ多くも人様の食生活に踏みこんで話をすることが多い。なにかといえば「バランスよく食べましょう」などとおせっかいをしている。

この「バランスよく」というのはたいがい誰にでも当てはまる食事療法の基本で、それができるだけで糖尿病や脂質異常症が改善するケースはかなり多い。さて、日頃からそんな業を重ねているものだから、自分がコンビニで夕飯を買う番になると困る。

勤務先の病院に入っている店舗で、夜も開いているのはコンビニだけ。出前をとってもいいが、届いたときにこちらが暇とは限らない。面倒なので、コンビニ食で夕食も翌日の朝食も済ませる。しかし実際のところ、コンビニでバランスのよい食事をとるのは大変だ。

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主食に、野菜に、たんぱく質に、飲み物に…と付け足していくうちに、会計はあっというまに500円を超え1000円のラインに近づいていく。たかだかコンビニ食に、これだけの額を使うのは悔しい気もする。しかしそれでも、職業倫理の観点から「バランスよく」食べなければならない。当直のたびにああでもないこうでもないと考えながら、コンビニに並んだ多種多様な商品の中を5分も10分もうろうろしている。

 

「魚がとれる」の訴求力

さて、そのコンビニで、先日「サラダフィッシュ」なる新商品を目にした。

「サラダチキン」がブームになり始めたのは2013年ころのことだった。茹でて味付けされただけの鶏むね肉は、高たんぱく、低糖質・低脂質で食べ応えもあるということで、健康志向の消費者やダイエッターにもてはやされた。今ではどこのコンビニにも置いてある定番商品となっている。

「サラダフィッシュ」は、その隣に並んでいた。スケソウダラの切り身を、植物油などで調味したものらしい。パッケージには大きな字で「お魚のたんぱく質、DHA、EPAがとれる」とあり、それぞれの含有量がポップアップで表示されている。「DHA 90mg」「EPA 35mg」。まるでサプリメントのようだ。

100g程度で300円と、かなり強気の価格設定である。しかし「バランスよく」食べなければならない筆者にとって、「魚をとれる」という文言の訴求効果は大きい。思わずサラダと一緒に購入し、期待に胸を膨らませて食べてみた。困ったことに、これがまったく美味くない。それ以来、魚を食べたいときには「サラダフィッシュ」ではなく、素直に「鰯の煮付け」や「鯖の塩焼き」を買っている。

まあ、この手の商品においては、そもそも味がどうとかではないのかもしれない。まさしくサラダフィッシュのキャッチコピーにあるとおり、今日食事は「食べる」ものではなくて「とる」ものなのだ。食事を食材や栄養素のレベルまで還元し、まるでサプリメントのようにして売るこのありかたに、かつて批判された「ニュートリショニズム」の話を思い出した。