あの大女優たちが「ヌード」になった理由

売れようとしたのではなく…
週刊現代 プロフィール

ただ作品のために

樋口は、現在のソフトバンクのCM「白戸家」の母親役からは想像できない癖の強い若手女優だった。

樋口可南子さん、孫正義社長とPhoto by gettyimages
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'84年に公開され、草刈正雄と共演した映画『湾岸道路』では、人妻でありながら、夫公認でホステスとして働き、売春にまで応じる女性になりきった。同作の監督を務めた東陽一氏が言う。

「樋口さんは濡れ場のシーンの撮影になっても自然体のまま、固くなるなんてことは一切なかった。彼女は裸になってもわいせつな雰囲気がまったくしなかったのが印象的でした。植物的な美しさとでも言うべきでしょうか。樋口さん以外では、この映画は生々しくなりすぎてしまって、成立しなかったと思います。

樋口さんは、一人の女性として内面を磨き続けたからこそ、自然な動きで役柄を表現できるのでしょう。撮影現場で樋口さんはいつもニコニコしていて、『この監督は次に一体なにをやってくれるんだろう』という眼差しで私のほうを見ていたりする。私自身、とても楽しい現場でした」

 

'87年には衝撃作、山田詠美原作の映画『ベッドタイムアイズ』に主演する。本作で樋口は黒人の恋人との4度にわたる激しいベッドシーンを見事にこなしている。彼女の演技力と度胸のなせる業に他ならない。

30歳のときに出演した『座頭市』('89年)では、深夜の露天風呂で勝新太郎と湯の中で繋がる。

「男の人と入るのは初めて」

臀部も露に泳いで盲目の市に抱きつき、情交を誘う姿に映画ファンはみなゾクゾクした。

元文部官僚、映画評論家で京都造形芸術大学教授の寺脇研氏が言う。

「樋口さんは『男はつらいよ』のマドンナ役に抜擢された翌々年に『ベッドタイムアイズ』に出演しています。秋吉さんも『ひとひらの雪』の2年後に『男はつらいよ』のマドンナを演じているんです。

古手川さんも含めて、当時の3人は絶頂期であり、身体を張ったベッドシーンから国民的マドンナまで幅広い役を求められ、そして彼女たちはそれを見事に演じていた。女優として素晴らしいことだと思います」

「ベッドタイムアイズ」写真集「ベッドタイムアイズ」写真集―樋口可南子/マイケル・ライト (講談社MOOK)

前出の高田氏は「彼女たちの時代」をこう語る。

「裸になる芝居にかける熱意が許される時代でもあった。役者がCMで食べる時代ではなかった。いまは『こんな芝居したらCMがなくなる』なんて言いますが、それがイカンのよ。誰もがただただ映画のために仕事をした。だからこそ女優は輝きを放ったわけです」

彼女たちのような女優にはもう会えない―。

『週刊現代』2019年6月15日号より