アメリカを覆う陰謀論「Q」とは?トランプも手を焼く聖典の中身

「ディープ・ステイト」に「沼の水」?
海野 素央 プロフィール

危険な動向

加えて本書からは、Qアノンやそのフォロワーの中で、新たに危険な動向が出てきていることもはっきりと読み取れます。それが「ネバー・トランパー(Never Trumper)」という概念です。

「WWG1WGA」は、「政府内のあらゆるレベルに、反トランプ派であるネバー・トランパーが潜り込んでいる」と警告を発しています。たとえば、ジョン・ブレナン元米中央情報局(CIA)長官をこの反トランプ派の一人に挙げ、「米軍以外の情報機関は信用できない」としています。

事実、トランプ大統領自身もブレナン元中央情報局長官をはじめ、ジェームズ・コミー元米連邦捜査局(FBI)長官、アンドリュー・マッケイブ元連邦捜査局長官代行、ジェームズ・クラッパー元米国家情報長官など、FBIやCIAのトップを激しく批判してきました。

 

「WWG1WGA」は、「トランプ大統領は反トランプ派と一人で戦うことはできない」「信頼できるのはトランプ大統領と米軍だけだ」と主張し、「トランプ大統領を守れ」と呼びかけています。Qアノンとそのフォロワーは、大統領権力のブレーキとなりうる米国内の様々な機関に対してすら、もはや個人レベルで激しい攻撃を仕掛けるようになっているのです。

「WWG1WGA」は、トランプ大統領とQアノンが「嵐の前の静けさ」「最高の状態」などといった共通のフレーズを使用している点を、両者が通じている証拠として強調しています。さらに、以前Qアノンが投稿した朝鮮半島の写真が、大統領専用機(エアフォースワン)から撮影されたものであると断定しています。

ただし、これに関して前出のルーさんは、「Qアノンは特定の人物ではなく、米軍の情報機関で働く複数のメンバーである」と考えていました。前述したように、彼女はフリン元大統領補佐官がQアノンの投稿に関与している可能性を口にしました。フリン氏は元国防情報局長官でもありますから、Qアノンが米軍の情報機関内部にいるという説には、一定の説得力があります。

「WWG1WGA」は『偉大なる覚醒への招待』の内容を拡散するよう、読者に訴えかけています。本書は、Qアノンの信者拡大を狙った「布教の道具」といっても過言ではないでしょう。

そして「Qアノンの信者拡大」が、「トランプ信者拡大」に直結することは言うまでもありません。トランプ陣営はQアノンとの関わりをできるだけ目立たせないように神経を尖らせているようですが、来年の大統領選を控えて、さらに彼らの運動は活発化してくるかもしれません。