都道府県の人口差は30倍超に!目を背けたくなる「未来の地図帳」

三大都市圏は関西圏から終わりを迎える
河合 雅司 プロフィール

「ドット型国家」への移行

政府や与党内には、いまだに「国土の均衡ある発展」を掲げ続けようという動きが残っている。高速交通網の整備などに代表される大型開発計画を地域経済の起爆剤にしようという発想もある。だが、それは田中角栄政権の〝日本列島改造論〟に代表されるような、人口が増えていた時代の理想であり、人口減少が避けられなくなったいまは求めようがない。

いま、わが国に求められているのは、人口減少を前提として、それでも「豊かさ」を維持できるよう産業構造をシフトさせていくことであり、国民生活が極度の不自由に陥らぬよう社会システムを根本から作り替えていくことである。

いつまでも「国土の均衡ある発展」にしがみつくならば、日本にとどめを刺すこととなりかねない。いまの日本には、一から開発している時間的余裕などないのだ。いい加減、われわれは「日本が内側から崩壊し始めている」という厳しい認識を持たなければ、取り返しがつかなくなる。

他方、人口減少が深刻化しているにもかかわらず、道州制構想を唱える声がなくならない。人口規模を拡大させて課題を乗り切ろうとした「平成の大合併」を思い出すべきであろう。その大半は、過疎地域を拡大させたばかりか、少なくなった自治体職員のひとり当たりの「受け持ちエリア」を増やす結果に終わった。同じ愚を繰り返してはならない。

私は、旧来の発想を転換して「戦略的に縮む」ことを提唱している。多少は小さな社会になろうとも、「豊かな国」は実現し得ると考えるからだ。
「戦略的に縮む」には、「国土の均衡ある発展」から路線転換し、「拠点型国家」へと移行する必要がある。地図に落とし込めば点描画となるような「ドット型国家」への移行だ。

ここでいう拠点とは、少人数でも高い利益を上げられるビジネスが存在し、高齢者が歩ける範囲で日常生活を完結できるスマートな暮らしが待っているエリアのことである。

こう説明すると、コンパクトシティと同じではないかと思われるかもしれないが、政府などが語るコンパクトシティとは、既存自治体を前提とし、その中心市街地に人口集約を図ろうという考え方だ。

これに対して、私が提唱する「ドット型国家」とは、既存自治体の枠組みにとらわれず、もっと狭いエリアごとに〝ミニ国家〟(=王国)を作るイメージである。これまで語られてきたコンパクトシティとは全く別の考え方だ。

これならば、「地方の切り捨て」にはならない。「ドット型国家」への移行こそ、日本が人口減少下でも豊かさを維持し続ける唯一の策であり、真の意味での地方創生となろう

拠点を築くためには、地域の強みを知ることはもとより、人口減少が日本列島をどう変貌させていくのか、エリアごとの推移を知る必要がある。拠点の完成には、その地に住む人々だけではなく、様々な分野の連携が不可欠だからだ。他地域の実情や地域差を知れば補完関係を築けるし、個々に異なるニーズに応えることがビジネスチャンスともなる。

人口減少社会では、暮らしにおいても、行政サービスやビジネスを展開するにしても、「エリアマネジメント」を抜きにしてはうまくいかない。それぞれの拠点において、そこに住む人々が豊かさを維持するための独自の方策を自ら考え、決めていくことが不可欠となる。

住民を支えるビジネスも、それぞれの拠点の実情をよく見極め、個々に最も適したサービスや製品を提供しなければ成り立たなくなるだろう。

現在と未来の人々の足跡を追う

私はつねづね、少子高齢化と人口減少を、とらえどころのない巨大モンスターにたとえてきた。

ベストセラーとなった『未来の年表』では、日本社会で起き得る課題を「人口減少カレンダー」として、続編の『未来の年表2』では「人口減少カタログ」として描くことで、体系的にとらえる試みを行った。

これら「年表シリーズ」が、多くの方々に人口減少という「静かなる有事」に対する危機感を呼び起こしたことについては、一定の役割を果たせたと自負している。

『未来の年表』で描いたように、百貨店の閉店や閉店表明は名古屋市や千葉市、新潟市といった政令指定都市にまで広がっており、止まるところを知らない。私がそこで提唱した「24時間社会からの脱却」は、大手コンビニエンスストアでさえも余儀なくされてきている。

また『未来の年表2』で描いた後継者不足による中小企業の廃業・撤退はますます社会問題化するなど、予言書としての役割も今なお果たしている。

「24時間社会からの脱却」が進む(photo by iStock)

しかしながら、「年表シリーズ」はモンスターの外観を捉え、その存在を世の中に知らしめることに重きを置いたため、具体的な退治(=解決)方法を手にするには不十分なところがあった。

まずその存在を知ることから始めなければならないわけだが、知るだけで終わってしまって根本的な社会の作り替えに結びつかないのでは意味がない。

それを実現するには、モンスターの内部に潜り込み、その正体を暴き出さざるを得ない。そこで今回、「年表シリーズ」に一度終止符を打ち、社会の作り替えに必要なデータを取得しながら、新たなアプローチでモンスターに挑むこととした。

具体的には、その影響が各地域にいつ頃、どのような形で降り注ぎ、日本列島がどのように塗り替えられていくのか、その推移を内側から描き出そうというのである。誰も見たことのない「未来の地図帳」を作ろうということだ。

その意味では、「年表シリーズ」の枠を超えた新シリーズの第1弾である。

すべて「自分ごと」として考える

『未来の地図帳』は、すでに書店に並んでいる地方創生の成功事例をまとめた書籍や、個別の都市の未来予想図を描いた〝地域本〟とは一線を画す

それは何故か?