女性たちが「ベーシックインカム」を求め続けた歴史をご存知か

給付実験・アンペイドワーク・ケインズ
山森 亮 プロフィール

フィンランドでのベーシックインカムを求める動きには半世紀近い歴史がある。

そのなかで失業手当受給者を狭義の雇用へ戻すということは議論の中心になってはこなかった。

議論の中心にあったのはむしろ、仕事を、ケア労働やコミュニティワークといったアンペイドワーク、芸術・発明、起業なども含めて幅広く捉えること、そしてアンペイドワークが女性の方に重くのしかかるような性別役割分業のあり方をより平等にする可能性などであった。

こうした考えはフィンランドだけではない。

1970年代のイギリスやイタリアでは、性別役割分業を批判するなかでベーシックインカムや類似の要求が出され、このうちイギリスでは1977年に、労働者階級の女性たちのイニシアティブで、ベーシックインカムを女性解放運動全体の要求とする決議が全英女性解放運動大会で可決されている。

直近でも今年2月に、欧州議会からの助成で活動している「グリーン欧州財団」が、雇用の問題だけではなく、アンペイドワークの認知や性別役割分業への影響に焦点を合わせたベーシックインカムについてのレポートを発表している。

こうした点について検証できない政府の実験案に、フィンランド国内で長年ベーシックインカムに取り組んできた人たちは失望していたのである。

 

ケインズの予言と夢

さきほど触れたアンペイドワークの問題だが、この問題は第1回で触れた「雇用の危機」の問題とも関連してくる。

その時にイギリスの経済学者ケインズの予言について触れた。2030年までに技術革新によって社会的に必要な労働は一人当たり週15時間程度に減るだろうというものだ(ケインズ「孫の世代の経済的可能性」)。

このケインズの予言は正しいのだろうか。

2030年までまだ10年あまりあるが、私たちは、もう、ケインズの予言の当否を論じられる位置にいるだろう。予言にはいくつかの前提条件があり一概に外れたと言うと公正さを欠く。

しかし結局、この予言は長時間労働に苦しむ今の私たちに、何とも虚ろに響く。なぜ、「外れた」のか。