人の顔色を見るのをやめる

それからわたしの描く絵はどんどん明るくなり、自分の方向性をはっきりと見つけられた気がします。

人の顔色を見ることをやめ、心の中からわきあがるものを自由に紙の上に表現できるようになっていったからです。
辛い気持ちでなく楽しい気持ちで描いた絵はやはりハッピーに仕上がる気がします。

いまでも「これはいい絵が描けた!」という時は、まっさきに隣の部屋で仕事をしている夫に見せに行きます。

夫は、仕事を中断されてもそんな時は嫌な顔1つせず「すてきだね!」「君は天才だよ」などと褒めてくれるのです。
そうしてまた私の自信は少し積み上がって、もっと驚かせたい、褒められたいと思うのです。

また夫だけでなく、編集者さん・デザイナーさん・そして読者やファンの方からの褒められた言葉や反応を素直に受け取れるようになりました。
それまでは「本心は違うのでは……」なんて思っていたのです。

人の顔をきちんと見られるようになって

人の顔をちゃんと見ることもできるようになりました。
笑顔で会話をし、目を見て相槌を打てるようになりました。
そのおかげで、人の顔を観察することができて、自分が納得できる人物画も描けるようになりました。

笑顔でいれば、相手も笑顔を返してくれるということに気がつきました。

こちらが緊張して暗くしていれば、それは相手にも伝わるんですね。そうやって笑顔で、積極的に個展や持ち込み営業などを行なっていると、どんどん違った分野のあたらしい仕事が入ってくるようになったのです。

同じ海を眺めたとしても、綺麗だなと思ったり、悲しみが詰まっているように見えたり。どこまでも行ける自由さを感じたり、一人ぼっちで取り残されたような気がしたりしますよね。

そう、目で見て自分が感じたことが、たった1つだけの真実ではないってことを知ることができたのです。少し離れてみたり、別の角度から俯瞰したりしてみると、気がつかなかったことも見つけられるし、新しいことが発見できるかもしれない。

「自信を持つこと」「人に頼ること」その2つを自分の人生に追加できたことで、私の絵は自由に色をたくさん持つようになっていきました。

六本木ヒルズで開催された松尾さんの個展。「カラフルな色彩」は人生に色づいていくことで、鮮やかになっていった 写真提供/松尾たいこ

次回は7月6日公開予定です

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