「なんでいつも下を向いてるの?」

佐々木と出会った頃、待ちあわせの場所に先に到着して待っていると「なんでいつも下を向いているの?」とよく聞かれました。

私は人と目を合わせるのが苦手でした。人と目があうと「この人、きっとわたしのことを悪く思っている」というわけのわからない不安にかられるのです。他人は何を考えているかわからない、自分を批判しているのではないか……今考えると、自意識過剰過ぎです。

また、私はあまり笑わない人間でした。
もともと歯並びが悪くて、それがずっとコンプレックス。東京に出てきた時に、たくさんあるコンプレックスを一つずつでも減らしていこうと、まずは歯の矯正を行い、それが終わったばかりの頃でした。
だからまだ笑顔に慣れていなかったのです。

そうして笑った時に、歯を隠すクセのせいで、すこし口元がゆがんでしまっていたようで「せっかくの笑顔がもったいないよ」と言われました。

それからは自宅に戻ると、鏡を見て笑顔の練習をしたし、実際に一緒にいると楽しいことばかりだったから、次第に積極的に笑うことができるようになりました。

今では、取材を受けての撮影時なども自然に笑顔になることができます。

佐々木俊尚さんと。佐々木さんに出会うことで、「ダメだ」「どうせ」という言葉が薄まって行った 写真提供/松尾たいこ

次第に絵に「明るさ」が加わる

佐々木との出会いは、本当に私の世界を明るく照らしてくれました。

それまで当たり前だと諦めていたことが全く当たり前じゃないことを知り、そして自分ではダメだと思っていたことが、いい部分だったことに気づかされていったのです。

私は常に自分のダメなところばかりを数え上げる人間でした。
「あれができない」「これもできない」そんな私に彼が言った言葉は、私をガラリと変えるものでした。
「あんなにステキな絵が描けるんだから、他は何もできなくていいじゃない」「人ができることは、その人たちにまかせればいいんだから」

彼は私に才能があることに気づかせてくれて、自信を持たせてくれました。

できないことを思い悩むのではなくて、できることを伸ばせばいいんだ!そう思ったら、目の前に明るくて広いまっすぐな道が見えたようでした。
自分の意識を変えたことで、ものの捉えかたも変化し、生きることへの意欲も湧いてきたのです。