哲学者は大丈夫なのか!?

髙橋秀実さんインタビュー(後編)

読売新聞の人気お悩み相談コーナー「人生案内」の回答者だったノンフィクション作家の髙橋秀実さん。読者の「悩み」に対する、時に突き放したようで実はあたたかい回答はたくさんの読者の気持ちをラクにしました。悩みをラクにするその哲学者並みの回答の秘訣は何なのか。髙橋さんの近著『悩む人 人生相談のフィロソフィー』(文藝春秋刊)に勇気をもらった現代新書の編集者(R介)によるインタビューの後編です。

※前回のインタビューはこちら。

哲学は役に立たない!?

R介 哲学がわからない私に、髙橋さんは前回、「フィロソフィー(哲学)というのは、知を愛するのではなく、言葉の順番通り、素直に愛するを知ることと解釈すればいい」と言ってくれて目からウロコでした。私も相談されたら的確に答えて、愛される人間になりたいと感じました。髙橋さんは悩んでいる人からの相談にどのように名回答を導き出すんでしょうか?

髙橋 名回答かどうかはわかりません。ただ、回答のプロセスをご説明すると、まず私なりに回答を考えて妻に相談するんです。

そうすると「アナタ、女心がぜんぜんわかっていないのね」と怒られます。それで「だいたい、あの時だって……」という具合に私の昔の過ちを蒸し返される。なにしろ過ちが多いもんですから。だからおのずと反省も込められるんです。

例えば、本書にも紹介しましたが、「外国人男性だけにしか興味を持てない」という相談がありました。「日本人男性に魅力を感じたりドキドキしたりせず、日本人を好きになれない」というお悩みです。

「彼氏がいない」とのことだったので、モテないだけじゃないかとか思っちゃうんですが、それじゃ身も蓋もありません。そこで私が考えたのは、彼女は日本人が単一民族だという幻想にとらわれているんじゃないかということです。

ご存じかと思いますが、日本は昔から多民族国家で、顔のバリエーションも豊富です。アラブ系、アフリカ系の人もいれば、コーカソイド系の人もいる。それに気づくべきだと。民族という観点からすると内と外を分ける発想自体が間違っているんじゃないかと。

妻にそう話したところ、「なんでわざわざ難しそうな話にするの」と叱られました。

「じゃあ、どう答えればいいの?」とたずねると、「そんなに外国人が好きなら、外国に行けばいい」と。これも2秒ほどの即答でしたね。そんな単純な問題じゃない、と一瞬思ったんですが、よくよく考えてみれば好き嫌いは単純な問題ですよね。

それに外国に行くとなると、どの国に行くかということになって、「外国人」と一括りにできなくなる。その国に行ってしまえば、相手は外国人ではなく、自分が外国人になるわけで、そこで本当に好きか、と問い質せるわけです。

私の考えた回答は「知を愛する」ですが、彼女の回答はまさに「愛するを知る」。やっぱり、いわゆる哲学は何の役に立たないとしみじみ思いましたね。