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「老後に2000万円不足」騒動、金融庁の欺瞞とマスコミの大間違い

こんな説明をしていて大丈夫か…?

2000万円は「不足」しているのか

「年金不安」に関する議論がにわかに注目されている。

本件は世上を賑わしている論点とは全く異なる意味で非常に不安が募るニュースである。新聞各紙では、

「人生100年時代、2000万円が不足」(日本経済新聞)
「人生100年 夫婦老後に2000万円 金融庁、資産形成促す」(東京新聞)

といった見出しが躍り、テレビのニュース、ワイドショーでも連日取り上げられた。その後、麻生太郎財務相、さらには首相による火消しが続くが、政治もメディアもともにこの報告書の問題点を正しくとらえていない

発端は、朝日新聞が5月23日に報じた

「人生100年時代の蓄えは? 年代別心構え、国が指針案」(朝日新聞)

である。金融審議会市場ワーキンググループの報告書(案)1の公表をうけての報道であるが、個人的には、それほど大きなニュースとは認識していなかった。数十年にわたって議論されている貯蓄から投資へ(銀行預金中心の貯蓄から、株式・債券投資への移行)を促進するという、よくある報告書としか感じなかったからだ。

 

しかし、あらためて報告書案の内容を見ると――その既視感に驚いた。それが投資勧誘パンフレットの定番手法、しかもあまりに使い古された質の悪い勧誘資料とそっくりだったからだ。

「老後資金が2000万円不足する」根拠として提示されるのが高齢者無職世帯の平均収入と平均支出である。出典は2017年家計調査のものだ2

家計調査は、支出を通じて家計の消費行動を捉えることを目的に作成されている。図の支出は調査対象世帯の支出額の平均値であり、その値は「老後の生活に必要な額」とは関係がない。このデータから読み取れることは、「2017年の高齢者無職世帯は(平均すると)月26万円使うことができる収入と蓄えがある」ということのみだ。