〔photo〕gettyimages

「1分間に大量ハッカー攻撃、眠れぬ日々…」仮想通貨運営者のリアル

元マウントゴックス運営者が明かす
希望と欲望が混在する仮想通貨業界。マルク・カルプレス氏は、その始まりとされるビットコインの可能性にいち早く気づき、若くして世界最大の仮想通貨取引所・マウントゴックスの運営を開始。しかし、その後、仮想通貨業界を揺るがす大事件の当事者となる――。このほど初著作『仮想通貨3.0』を上梓したばかりのカルプレス氏が、当事者として味わった「仮想通貨取引所の運営」のリアルで過酷な実態を初めて明かす。
 

「普通の会社」ではない

2019年6月某日、世界中のメディアが集まる外国特派員協会の要請を受けて、私は記者会見を行いました。これまでにも国内外の大統領や首相など、国際的に注目される数々の著名人がスピーチを行ってきたとても光栄な場です。嬉しい気持ちになったのは言うまでもありません。しかし同時に不安もありました。果たして世界のメディアはいまの私をどう思っているのか――。

会見した元マウントゴックス運営者のマルク・カルプレス氏〔photo〕gettyimages

いざ会見が始まってみると、「元容疑者」というレッテル貼りをするような雰囲気は全くありませんでした。「仮想通貨業界の今後の見通しを聞かせてほしい」、「仮想通貨取引所に対する規制をどう思うか」など、いただく質問からはむしろ仮想通貨の専門家として迎え入れてくれていることを感じ、改めて公平な眼差しに感謝しました。

とはいえ、私を知るうえで2014年のハッキング事件の話題を避けて通ることはできません。当日は、会見の参加者からも以下のような率直な質問を受けました。

参加者からの質問 当時は、世界最大の仮想通貨取引所を率いていたということでご自身「時の人」だったと思います。その後、事態が大きく崩壊してしまったことを振り返ると、そのような結果を避けるために、いまから思えばできたことがあったかどうかお考えを教えてください。

私はこの質問に対して、次のように答えました。

「いま思えば、セーフガードとしてもっと何かやれることがあったかもしれません。ただ当時、マウントゴックスは想定以上の成長を遂げている期間で、複数の課題に対応しなければなりませんでした。国が相手だったり、顧客が相手だったり、日常的に対応すべきことがあまりにも多過ぎて、そのような状態を回避するに至りませんでした。

急激に顧客の数が増えた結果として、顧客対応のスタッフを認証作業のために雇う必要がありましたが、仮想通貨の世界では1ヶ月の間に需要が上がったり下がったりします。かといって、社員を1ヶ月で辞めさせることはできません。なので、普通の会社のように仮想通貨の会社を運営すること自体が大変困難でした。バンキングやセキュリティなど、リスク対策のニーズに十分な人を割くことができませんでした」――。

これはウソ偽りのない、私の本音です。

実際、当事者として仮想通貨取引所を運営する経験をした身からすれば、その現実はとても困難なものに満ち溢れていました。