F35墜落の原因は… 防衛省の結論と、それでも残された「謎」

「空間識失調」でも説明がつかない
半田 滋 プロフィール

なぜ気づかなかったのか

海へ向かって加速させるという事故機の奇妙な飛び方について、前出の永冨氏は「理解不能の行動」として、次のように指摘する。

「管制官の『左旋回』の指示を受けてから、事故機はわずか15秒で墜落している。これほどの急降下であれば、目の前の高度計はたいへんな勢いで動いている。それまで機体の姿勢がどうあれ、操縦士はこの時点で自分が急降下していることに気づくはずだ」

空間識失調に陥っていて、高度計の動きに気づかなかった可能性はないのか。

永冨氏は、「空間識失調に陥ると自機の姿勢が分からなくなるが、判断力がすべて失われるわけではない。高度計が異常に激しく動いていれば、気づかないはずがない。また、仮に計器や機体に不具合があると感じたならば、管制官にその旨を伝えるはずだが、それもなかった」という。

 

そして、「急降下して3000m前後まで高度が下がっていれば、緊急脱出するほかない。しかし今回は、それもしていない。とくに理解不能なのは、左旋回をしながら猛烈な速度で降下していったこと。操縦士の心神の状態を含め、勤務状況などを詳細に調べる必要がある」と話す。

民間航空機で、操縦士が乗客を巻き添えにして故意に墜落させた例は複数ある。もちろん当該事故機の操縦士が自らの意思で墜落させた証拠は何一つない。むしろ高度計を見落とした可能性の方が高いのかもしれない。しかし、原因が明確にできない以上、あらゆる可能性を排除することなく、調査を続ける必要があるだろう。

米海軍所属のF35B戦闘機(Photo by gettyimages)

自衛隊の航空機事故は、発生から4ヵ月以内に防衛相に報告する義務がある。防衛省が調査結果を発表した10日は、4月9日の墜落事故から2ヵ月が経過したその日にあたり、4ヵ月の期限を折り返したばかりだった。

防衛省は、F35Aの操縦士に対し、空間識失調の対策を実施する一方、G-LOC防止のための教育とF35Aの機体の特別点検を実施するという。

事故から2ヵ月という切れ目のよいところで調査結果と事故対策を発表したのは、三沢基地に残る12機のF35Aの訓練再開を急ぐ狙いからではないだろうか。

日本政府は、この事故後も「105機のF35追加購入」の閣議了解を見直していない。先月、来日したトランプ米大統領を大いに満足させたF35の「爆買い」に正当性を持たせるうえで、早期の飛行再開は欠かせないのだろう。

その米国は日本にF35を売り込みながら、自国は40年も前に開発されたF15戦闘機をベースにした機体を80機購入することを決めた(「現代ビジネス」2019年6月8日、『日本がF35を「爆買い」のウラで、米軍はF15の大量購入を決めた』)。

日本は何の目的で戦闘機を買い、そして飛ばしているのだろうか。

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