F35墜落の原因は… 防衛省の結論と、それでも残された「謎」

「空間識失調」でも説明がつかない
半田 滋 プロフィール

ほぼ音速で急降下したのはなぜか

公表された概要に出てくる「米軍機」とは何だろうか。

墜落した海域の上空は航空自衛隊が訓練に使うB(ベータ)空域で、日米共同使用の三沢基地から離陸した米軍機や、米本土などから同基地へ向かう輸送機などが通過することは珍しくない。

この米軍機は事故当時、約11300mの高度を維持しながら三沢基地のある南西方向へ向かっていて、機首を南へ向けていた事故機と衝突する危険性があった。そのため、管制官は事故機に降下指示を出した。

事故機の動きで、奇妙なのはここからだ。

 

元戦闘機操縦士で航空自衛隊の航空事故調査部長だった永冨信吉元空将補は、次のように分析する。

「管制官から降下の指示を受けて、降下する際の速度が速すぎる。降下の指示があった場合、昼間でも時速670kmから780kmで降下するのが普通だ。まして事故機は夜間に飛行していたのだから、より速度を落とすのが一般的だ。

降下を急ぐ場合でもスピードブレーキを使い、降下に伴う速度超過を防ぐのが当たり前なのに、事故機は時速約900kmと猛スピードで降下している。これがまず不自然だ」

スピードブレーキとは、例えばF15戦闘機の場合、操縦席後方の機体上部に備え付けられているブレーキのこと。機体の一部がせり上がって空気抵抗を増すことで、急減速する仕組みだ。

しかし、F35Aにはスピードブレーキがない。機体の姿勢を制御するための主翼の可変翼や水平尾翼の動きを組み合わせて、スピードブレーキと同様の効果を生むことになっている。

イスラエル空軍所属のF15戦闘機がスピードブレーキを開いている様子(Photo by gettyimages)

こうした構造上の特徴が、急降下につながったのか否かはわからない。F35Aであっても、操縦士が意識して「スピードブレーキ効果」を使おうとすれば、このような急降下は避けられる。ただし、もしも機体が不具合を起こしていれば、その限りではない。

亡くなった操縦士は飛行時間3200時間のベテランだったとはいえ、F35Aでの飛行時間は60時間に過ぎず、操作に習熟していたとはいえなかった。

事故機は、地上管制官からの指示で左旋回する際さらに速度を増し、時速約1100kmで降下を続け、海に激突する形で墜落している。「音速の壁」は時速1225kmだから、音速に近い超高速でまっしぐらに海へ向かったことになる。

こうした不自然な動きは、「機体操作を誤ったため」もしくは「機体に不具合が起きたため」と考えられなくもない。しかし、機体や飛行記録媒体を発見できないまま捜索を打ち切った以上、今後とも操縦ミスや機体の不具合を裏付ける証拠が出てくることはない。

そこで防衛省は「事故原因を特定するのが不可能であれば、ありがちな空間識失調とするのが適当」と判断したのではないだろうか。

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