ファーウェイは本当に「悪の帝国」なのか…本社を訪れて確かめてみた

広大な敷地を歩いて見えてきたもの
近藤 大介 プロフィール

図書館入口右手の巨大なスクリーンには、古ぼけた戦闘機が飛ぶ写真が掲げられていた。第2次世界大戦の独ソ戦でナチスドイツと戦った旧ソ連軍の戦闘機「イリューシン2型」だ。その写真の下にはキャプションが付けられていて、大きな赤字でこう書かれていた。

〈 累々の傷を負わない者は、どうやって皮の肉が厚くなろうか。英雄とは古来から多くの困難に揉まれるものだ 〉

その下に黒字のキャプションが書かれていた。

〈 第2次世界大戦中に戦闘に遭い、篩(ふるい)のようになってしまったが、それでも渾身の力を振り絞って、依然として飛行を続けた「イリューシン2型機」は、ついに安全に帰還した 〉

任CEOは、5月21日に中国記者団の取材を受けた際にも、この写真を記者たちに配っている。ナチスの総攻撃に遭ったソ連軍に、トランプ政権の総攻撃に遭っている自分たちを見立てているのだ。

覆されたイメージ

ファーウェイの社内を巡っていると、想像していたほど危機感を抱いているようには見えなかった。それは一つには、「最悪でも14億人の中国市場は絶対に大丈夫」という意識から来るものだろう。

もう一つは、ファーウェイという会社は、すでに世界全体をカバーする多国籍企業に成長しているということだ。これも社員から聞いた言葉だ。

「われわれは中国大使館よりも多くの国をカバーしていて、各国及び各国企業と長年にわたる信頼関係を築いている。特に、5G技術に関しては、ファーウェイなしには成り立たないので、いくらアメリカが叩き潰そうとしても、絶対に潰れない」

もしもファーウェイが西側の自由民主国家の企業だったら、いま以上に発展しただろうか?

それはよく分からない。ファーウェイが中国以外の企業だったら、もっと自由に伸び伸びやれるから、いま以上に発展していたという考え方もあるが、ファーウェイには深圳で享受してきたメリットもある。

2000年に西側諸国でITバブルが崩壊したが、ファーウェイは中国にいたからあまり影響を受けなかった。2008年にリーマン・ショックが起こった時も、同様に中国にいたから、深い傷を負わずに済んだ。だから、どの国の企業だから良いとか悪いとかいうことではなくて、企業というのは与えられた環境の中で生きていくしかない。

私はファーウェイに対する偏見は持っていなかったが、ある種のイメージは抱いていた。だがこの「キャンパス風本社」で見聞しているうちに、多くの日本企業と同様、まっとうに努力している企業であることを知った。

次週は、5GやIoTといった技術的な面から、ファーウェイ内部で起こっていること、及びアメリカへの対応について記す。

〈次週につづく〉

トランプ大統領は英仏へ、習近平主席はロシアへ。大阪G20を前に、せめぎ合いを続ける米中。どうぞご高覧下さい。