ファーウェイは本当に「悪の帝国」なのか…本社を訪れて確かめてみた

広大な敷地を歩いて見えてきたもの
近藤 大介 プロフィール

そのタワマン群の谷間に、ようやく出張社員用ホテル「安朴逸城」を発見した。2016年末の完成で、27階建ての高層タワーが4棟建っていて、全1035室もある。通りを挟んだ向かいにも、同様の「安朴珀莱」(208室)が聳えていた。

失礼だが、ボロい社員寮のようなものを想像していた私は、いきなり度肝を抜かれた。何だか地球を離れて、銀河系の星雲の中に降り立ったような気分だ。

ホテルの入口には、「長旅を癒やすように」と、ミネラルウォーターやオレンジジュース、クッキーなどが置かれていて、その先に吹き抜けのロビーが広がっていた。ロビーでは「JUNJI」という名の2台のロボットが、可愛らしい女声を発しながら動き回っている。フロントと客室とのやりとりや、ルームサービスなどを担当しているのだという。

12階の部屋に入ると、オフィス作業ができる客間とベッドルームがあり、約100㎡もあった。これで1泊538元(約8400円)。最新の5つ星ホテルに1泊1万円以下で泊まっている感覚だ。そもそも社員が本社に戻るための施設を、なぜこれほど豪華に作ったのだろうか?

暗い雰囲気は皆無

翌朝、朝食のビュッフェに下りたら、そこでも豪華さに仰天した。南方なので果物が豊富なのは分かるにしても、麺職人が麺を茹でていたり、パンが30種類くらい並んでいたり、本格的な焙煎コーヒーが淹れられたり……。

広大なレストランの奥の椅子に座ってしばし観察していたら、この施設には3種類の人々が泊まっていることが分かった。第一に、中国及び世界中に散らばっているファーウェイ社員たち。第二に、中国及び世界各地からやって来た取引先企業の人たち。第三に、私を含むその他の外国人である。

だが、アメリカからの圧力を受けて、「暗い商談のため」訪れたような雰囲気は感じられなかった。各テーブルには笑顔が見られたからだ。もっとも「食べるために生きる」と揶揄される中国人は、そもそも食事中は明るい表情の人が多いので、即断はできないが。

黒人の若者たちがやって来て、隣のソファー席を占領した。彼らは本当に喜々とした表情をしていて、パンを山盛りに盛ってくる。声をかけてみると、ギニアの学生たちだった。

ギニアは西アフリカの旧フランス植民地で、人口約1300万人。「未来種子計画」(ICT)というファーウェイが世界中で行っている学生研修制度を利用して、10人が2週間の研修を受けているのだという。費用はすべてファーウェイ持ちだ。

「アメリカの制裁によって何か影響が出ていますか?」と聞くと、こう答えた。

「いまのところ、何もありません。というより、アフリカ大陸では今後もないでしょう。そもそもアフリカ大陸では『5G』(第5世代無線通信システム)の敷設はまだ先のことですし、ファーウェイなしにアフリカ大陸の発展はあり得ないからです」

「卒業後、ファーウェイに就職したい人は?」と聞いたら、全員が手を挙げた。「わが国ではファーウェイは一番の憧れの会社です」。

 

東西1.6㎞、南北2㎞の広大な敷地

朝のホテルのロビーは、出張客たちでごった返していて、その場で商談や打ち合わせも始まっていた。それぞれの目的地によって、異なる「社内バス」が出ており、一番遠い松山湖の研究開発本部までは、1時間弱もかかる。

ファーウェイの本部は、ホテルから3㎞ほど西に行ったところに広がっていた。東西1.6㎞、南北2㎞ほどの広大な敷地を、11区域に分けている。

具体的には、A区は創業者である任正非CEOのオフィス兼VIP接待所、社員食堂棟などで、南側の半分は改装中。B区は経営・財務棟と図書館など。C区はデータセンター。D区はオフィス棟。E区は研究開発センター(東莞・松山湖に移動済み)。F区は本部ビルと展示センター(旧研究開発センター)、社員食堂。

G区は以前は生産部門で、現在は松山湖に移動済み。H区はオフィス棟。I区は存在しない(理由は不明)。J区は研修センター。K区は以前は工場で、現在は改装中。小区は社宅。その他、周辺には開発中の地区がいくつかあり、日々変化している。

中央には南北に五和大道が縦断し、それ以外の道はすべてファーウェイが整備し、中国内外の科学者の名前を付けた。張衡路、稼先路、陳平路、沖之大道、ベル路、キュリー夫人路……。