米中新冷戦は「新しい文明の衝突」なのか? 国際政治学者はこう見る

今こそ日本は現実を直視すべきである
篠田 英朗 プロフィール

日本の立ち位置

ハンティントンが1990年代に『文明の衝突』論をぶち上げた時、日本は一つの文明圏とされた。当時はまだ日本経済のバブルがようやく弾けた頃であった。

1980年代には「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とまで言われ、冷戦終焉直後にはアメリカの最大の脅威は日本の経済力だと主張する者などもいた。

西洋文明にも、中華文明にも分類できない日本を、一つの文明圏だと考えることには、それなりの現実感覚があったのだろう。

だが今日、日本文明なるものを観念し、日本文明が他の文明と衝突する様子を懸念する者は、アメリカにも、その他の地域にも、もはやほとんど存在していないのではないだろうか。

 

言うまでもなく、それは日本の国力の衰退がもたらした帰結だ。1995年においては、世界経済の中で、日本のGDPは17.6%を占めていた。今日では3分の1以下になっており、2020年には5.3%にまで低下するとされている。

単純に人口だけをとっても、1995年には日本人は世界人口のうち2.2%を占めていた。今日では、1.6%程度にまで低下している。

国力の低下は残念なことだが、よく言われるように、過剰に警戒されなくなったのは、悪いことではない。

日米同盟の安定感は、1990年代と比べれば、見違えるようだ。上述の国防総省「インド太平洋戦略報告書」では、日本の存在感は大きく、アメリカのインド太平洋地域の同盟国群の中で常に筆頭で言及されている。

北朝鮮拉致被害者問題について、アメリカは日本政府の立場を全面的に支援する、という記述まである。

日本は、インド太平洋を「戦略」と呼ぶことなく、インド太平洋「構想」のままで、中国の存在をアメリカよりも慎重に意識していくだろう。

ただし、それにしても安定した日米同盟の枠組みを前提にしたうえでのことになる。日米同盟が崩壊してしまえば、呑気なことを言っている場合ではなくなる。