# マルクス・ガブリエル # 新しい実在論 # ポストモダン

ポスト・トゥルースを突き抜ける新しい哲学の挑戦

マルクス・ガブリエルと新しい実在論
浅沼 光樹 プロフィール

客観的事実・科学的真理への「懐疑」

われわれはさまざまなことを当然と信じて生きている。ある出来事が、自分の信じていることと矛盾するにもかかわらず、真であると証明されたとしよう。この真なる出来事を受けいれ、それにのっとって自らの信念の体系を組みなおすのが合理的な態度である。

しかしわれわれは必ずしもつねに合理的思考や明証的事実に基づいて生きているわけではない。このような「発見」が1950年代以後、実験心理学の分野において相ついでなされた。客観的事実や真理ではなく、同じようなタイプの人の意見に適合するように自分の信念を形成していく傾向がわれわれにはある、ということが実証されたのである。

 

このように「客観的事実」を軽視する傾向が人間にそもそも備わっているとして、この傾向を一気に加速させることになったのが、近年におけるSNSなどのソーシャルメディアの発達である。

ソーシャルメディアにおいては、われわれは自分の気にいらないものをクリック一つで削除することができ、その結果、同じ傾向の人々とグループを形成しやすくなっている。明らかな証拠を挙げられても、それと真っ向から対立する周囲の人々の意見に同調する、というのは、ソーシャルメディアに親しんでいる人であれば、ごく見慣れた光景であろう。

しかしこうなると科学的・学術的真理でさえも安泰とは言えない。ある事柄がいかに科学的に、あるいは一般に学問的に真であると証明されようとも、科学的・学問的方法そのものに対して疑いがかけられ、それとは別の、とうてい科学的・学問的とは言いがたい、ものの見方が提起されるのである。

科学を含む学問一般に対する、このような懐疑的態度は今や歴史的事象ばかりではなく、より客観的と思われる原発や地球温暖化のリスクにまで及んでいる。