「お前、演劇やってみらんか?」

ところで、そこまで野球に打ち込んで来た岡田くんが、役者の道を選んだのは何故なのだろう?それは、高校3年生の秋、演劇部の助っ人として舞台に立ったことがきっかけだった。

「野球部を引退してすぐ、担任の先生から『お前、演劇やってみらんか?』と言われて、軽い気持ちで引き受けました。当時は高校卒業後も野球の道に進むつもりだったので、その間の時間に、何か他のことに挑戦してみたかったんです」

それが、運命の別れ道だった。小学校の学芸会でさえ舞台に立ったことのなかった岡田くんが、初めて演じたのは特攻隊員の役だった。1時間ほどの劇の中で、出番は15分ほど。セリフもそれほど多くはなかったが、重要な役だった。

「最初の1週間くらいはちょっと恥ずかしさもあったけど、すぐに物語の世界にのめりこんで行きました。地区大会を勝ち抜いて、県大会に行って、その県大会の時に感じた気持ちが新鮮で。今の語彙力では言い表すことが難しいんですけど……楽しい!快感……!!って」

その体験は、彼の人生の行く先すらも変えてしまうほどの衝撃だったのだろう。

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一方、中1の時にスカウトを断られたあとも、事務所は岡田くんを諦めず、定期的にコンタクトを取っていた。5年の歳月をかけて、ついに事務所のラブコールと岡田くんの思いが合致する時がやってきたのだ。
 
「実は、演劇部の顧問の先生が『男子が足りないので誰かいないか?』と職員室で訊いた時、僕の名前を出したのは校長先生だったんだそうです。だから、卒業する前に校長先生が、『お前がこの世界に入ったキッカケのひとつは俺だから、失敗したら連絡して来い。ちゃんと面倒をみてやる』って言ってくれました」

ファンとしては、岡田くんを役者の道に導いてくれたすべての人たちに感謝せずにはいられない。もしも、高3の秋の出来事がなかったら、岡田健史という俳優が誕生することはなかったのだから。

「撮影で大切なのは、写真家さんがぼくに何を求めているか。何を引き出したいのか考えながら撮影しています」とことん真摯である 撮影/森清