巨大アパレル企業が「ドーナツ屋」と「ホテル」を始めた本当の理由

ストライプ・石川社長が明かす
マネー現代編集部 プロフィール

「路線転換」の妙技

落ち着いたイートインスペースのカウンターに腰かけると、高級すし店のように目の前で丁寧にドーナツが作られる。それをナイフとフォークで食べるというこれまでにないスタイルである。ちなみに店舗のデザインは、新国立競技場をデザインしたことでも有名な建築家・隈研吾氏が手掛けたものだ。

京都・新京極の「koe donuts」1号店の店内。店内を彩る籠の竹も嵐山産で、地産地消を強く意識している

ドーナツは、素材にもこだわり抜いている。キーワードは「オーガニック」「天然由来」「地産地消」。素材は有機小麦、天然由来の玄米油、牛乳や卵は京都の美山産。従来のドーナツのイメージを、見事に裏切っている――。

石川氏が社内の反対意見を押し切ってまで「ドーナツ」を新規事業の一つに選んだのは、そもそも同社が「路線転換」を強く意識している会社だからでもある。

現在、グループ売上高が1300億円を超える同社は、今年創業25年目を迎えた。この四半世紀に幾度も経営を大きく変化させてきた石川社長は、「路線転換こそが企業継続の条件」と言う。

もちろん、路線転換とは言うは易し行うは難い。新しいことに挑戦することへの社内の抵抗は少なくないし、失敗のリスクもある。なぜストライプ社は路線転換を実行し続けられるのだろうか。

 

もともとストライプ社が岡山県で創業したのは、石川氏が23歳の94年だった。当時はセレクトショップ全盛時代。同社でも海外の前衛的なデザインのブランドを扱っていたが、転機は創業5年後に訪れた。倒産の危機に襲われたのだ。

「当時はもう一心不乱でしたが、思えばこれが最初の路線転換でした。高級ブランドを仕入れ、アバンギャルドなデザインを売りとするセレクトショップをやめて、リーズナブルで、ベーシックなデザインのブランドを立ち上げ、企画、製造、小売りまでを一気通貫に行うSPAの業態にガラッと変えたんです。

当然、社員は大反対。会社の血をすべて抜き、血液型まで変わるような大改革でしたが、瀕死状態だった会社はこれで生き返った。売り上げは約3億円から約22億円と、3年で7倍以上に急伸。このとき立ち上げたブランドが『earth music&ecology』(以下「earth」)なんです」

「earth」といえば、いまや全国で人気の巨大ブランドとして知られる。しかし、じつはこの「earth」をめぐっても、過去にはそのブランド戦略を幾度と転換させてきた歴史があることはあまり知られていないだろう。