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米中貿易戦争が「歴史的悲劇」を生む可能性

電撃的和解はあり得そうもない

盤石に見える習政権に「噴出した不満」

米中貿易戦争の先行きは、近未来史に残るような悲劇的な結末となる心配が現実味を帯びてきた――。

その最大の理由は、中国の習近平国家主席(共産党総書記)の権力基盤が、一部に伝えられている以上に脆弱であるということだ。

そもそも2期目の習指導部は、2017年10月24日に閉幕した第19回共産党大会、翌25日に開催された第19期中央委員会第1回全体会議(1中全会)を経て発足した。

 

指導部人事を見ても、政治局常務委員は習総書記、李克強首相の2人だけが再任、残る5人は栗戦書中央弁公庁主任、汪洋副首相、王滬寧中央書記処書記、趙楽際中央規律委員会書記、韓正上海市党書記が新任だった。

「チャイナセブン」と呼ばれる常務委員7人を含む政治局員25人の構成からしても、黄坤明中央宣伝部筆頭副部長、蔡奇北京市党書記など習氏が抜擢・登用した人物が多く、同氏の権力基盤は盤石だとの評価が定着した。

その最たる人事が、現在の対米交渉の責任者である劉鶴副首相の枢要ポストへの起用だった。北京101中学の同窓でもある劉氏を政治局員に昇格させた上で党中央財経領導小組弁公室主任に指名したのだ。習政権の事実上の経済・金融政策の司令塔である。

それまでは、国務院傘下の財政部、商務部、国家発展改革委員会、人民銀行(中央銀行)を束ねる李克強首相が経済政策を統括していた。司令塔を李氏から劉氏に替えたのだ。

その結果、経済政策を担当する政府高官のほとんど(周小川人民銀行総裁ら)が更迭されて、2018年3月に副首相兼務となった劉氏主導で負債依存の投資と輸出重視の経済から持続可能な消費中心の成長へ政策大転換を図ったのだ。

こうした負債圧縮と金融市場開放を推進したことで地方政府からの強い反発を招いたのである。一言でいえば、既得権益層の抵抗である。過剰生産や地方財政の悪化などから大きな社会問題となったシャドーバンキング(影の銀行)の制御方針が抵抗勢力に負けて容認へと後戻りしたことがその典型である。

そして昨年8月、共産党長老を交えた恒例の北戴河会議で、習近平強権体制確立後のマクロ経済政策の失敗が指摘され、対米譲歩路線への批判が噴出したとされる。

裏取りできる話ではないが、同会議最終日に江沢民、胡錦濤・元前国家主席(共産党総書記)、朱鎔基元首相、そして李克強首相の4人連名で批判文書が手渡されたというのだ。

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