なぜ粉飾はなくならないのか…伝説の会計士が「監査法人の闇」を暴く

『会計と犯罪』著・細野祐二に聞いた
細野 祐二 プロフィール

ゴーンは有罪か、それとも無罪か?

―『会計と犯罪』では、日本も欧米のように、個人の投資家が開示情報をもとに企業の本当の業績を分析できる社会になることが必要だと述べられています。

監査法人による監査が信頼できない以上、個人投資家が自らの身を守るにはそれしか手段はありません。ところが、現実問題として分析にはかなりの費用がかかるため、なかなか難しい。そこで私は、企業の会計内容を簡単にチェックできるシステムを構築できないかと考え「フロードシューター」という会計分析ソフトを開発しました。

これを使えば、手作業だと1社調べるのに1ヵ月かけていた分析が、1社で20秒、100社でも20秒でできるのです。試しに、上場企業の業績をかたっぱしから分析すると、怪しい企業が5%から10%の確率で出てきます。

企業や金融庁がこのシステムを導入すれば、粉飾決算などあっと言う間になくなるのですが、今のところ、取り入れるところはありません。

 

―不透明な会計と言えば、現在進行形の日産・カルロス・ゴーン元会長の問題にも、多くのページが割かれています。

特捜検察による立件ですから、動向はずっと注視しています。一般に「ゴーン事件」などと騒がれていますが、会計処理の観点から言えば、あれは事件でもなんでもない。

中東日産からゴーン氏が支配する銀行口座に500万ドルが流れたことが、さも悪事であるかのように言われていますが、会計上は単なる「借入」と「貸付」に過ぎません。借りた側のゴーン氏が踏み倒したわけでも、「踏み倒す」と宣言しているわけでもない。

みなさんが住宅ローンを借りて、銀行から3000万円が振り込まれたのと同じことです。「損害」などどこにもないのに、なぜ特別背任と捉えられ、起訴されたのか、理解しかねます。

―ゴーン氏は無罪になると考えていますか。

それは、まだわかりません。現行の刑事訴訟制度の下では、裁判官が無実の人に無罪判決を書くのは困難で、それはとても勇気のいることだからです。裁判では検察が集めた日産関係者の膨大な供述調書が証拠として提出されます。そこには、ゴーン氏の「悪行」がこれでもかと書かれているでしょう。無罪判決が出るかどうかは、裁判官を勇気づける国民世論次第だと考えています。

かつて、厚生労働省の村木厚子元事務次官のケースで無罪が出たのは、特捜部の強引なやり方に対して、多くの国民が怒りを表明したからに他ならない。だからこそ、今回のケースも状況を冷静に見定めてほしいのです。

私がそうだったように、いつ誰が経済事件の当事者になってもおかしくはない。その時、司法が正しい判断をできるようになっているためにも、会計と司法に対して、もっと多くの人に関心を持ってほしいと願っています。(取材・文/平原悟)

『週刊現代』2019年6月15日号より