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なぜ粉飾はなくならないのか…伝説の会計士が「監査法人の闇」を暴く

『会計と犯罪』著・細野祐二に聞いた

独房のなかで涙を流した

―ライザップや武田薬品など、注目企業の会計に独自の視点から次々と疑問を呈し、その鋭い分析が話題を呼んでいる会計評論家の細野さん。

著書の『会計と犯罪――郵便不正から日産ゴーン事件まで』では、日本の企業会計の問題事例が後を絶たない理由を、ご自身の経験を踏まえて論説しています。

'04年3月、大手監査法人の会計士だった私は、害虫駆除会社・キャッツの株価操縦事件にからむ粉飾決算を指導したという身に覚えのない罪で、東京地検特捜部によって逮捕、起訴されました。最高裁まで争ったものの、上告が棄却され有罪が確定し、公認会計士の資格も失いました。

当時、私は50歳でしたが、あの瞬間、「自分の人生はもう終わった」と思いました。しかし、いまでも「あの決算は粉飾ではない」という確信に変わりはありません。それでも判決を覆すことはできなかった。これは、検察をはじめとする日本の司法が、会計の本質を理解していないことに原因があります。理解できないのは仕方ないことですが、聞く耳を持たないのは困ります。

 

だとすれば、なにが粉飾でなにが粉飾ではないのかを、正しく世の中に知ってもらうしか、私の主張の正当性を示す方法はない。そう考えたのが、粉飾決算の研究をはじめたきっかけでした。

―有罪確定後の執行猶予期間における苦闘と復活の物語は、本書の読みどころのひとつです。

東京拘置所での毎日は、本当に苦しいものでした。入所する前に尻の穴まで調べられて、独房の壁に向かって、ただただ呆然と過ごす日々。ある看守から「お前は辛いだろうけど、外で待っている人はもっと辛いんだ」と声をかけられたときは、思わず涙が溢れました。

唯一よかったのは、他にやることがないので英語の勉強に没頭できたこと。単語を覚えまくったおかげで、出所してから英検1級を高得点で取得することができました。あれ以来、英語の勉強法を聞かれるたびに、「捕まるのが一番いいですよ」と答えています(笑)。

―カネボウ、オリンパス、東芝……。巨大企業による粉飾が明るみにでるたびに我々が抱くのは、監査法人がなぜ見抜けなかったのかという疑問です。

監査法人は当該企業が粉飾していることはもちろん判っています。でも、それを指摘することはほぼ不可能。なぜなら、監査法人は会社から莫大な監査報酬を受けとっているから。日経平均採用銘柄の上場企業なら、最低でも1億円以上です。それだけもらえば、「適正」という意見以外の結論など出せるはずがありません。

私も、これだけ粉飾事件が続いたことで監査法人内部からの自浄作用を期待したこともありましたが、最近はそれももはや諦めています。