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能町みね子が子どもの頃に「ドハマりした」こわい本

人生最高の10冊

地図が好きだった子供時代

1位に挙げた尾形亀之助は一番好きな詩人です。知ったのは大学生の時でした。

私は大学に入って失望していたんです。一つ上の先輩がオリエンテーションで学生生活について色々教えてくれるのですが、授業をどうサボるかみたいな話ばかりしていて、しょうもないなあと。

何も勉強ばかりしたかったわけではありませんが、せっかく大学に入ったのだから興味のある授業は取ろうと思って、現代詩を選択しました。その授業で亀之助にはまってしまったんです。

詩には何らかの形で感情が乗るものですが、亀之助の詩は、それを極限まで削ぎ落としている。無機質な、絵のような詩に、衝撃を受けました。

尾形亀之助詩集』に収録されている、エッセイに近い散文も凄い。娘と息子にあてた手紙には、将来は何にでもなれる、性別だって変えられるということが書いてあります。彼が生きたのは明治から昭和初期です。その時代にこんな考え方ができる人がいたんだと、驚きました。

 

繊細な作風とは裏腹に、私生活の支離滅裂な感じも好きです。浮気をしまくり、二人の妻との間に6人の子をつくる。最期は41歳で餓死のような死に方をしているんですが、私はお墓参りにも行っています。

2位の『東京私生活』は散歩の本。散歩好きの私にとって、バイブルのような一冊です。

冨田さん、とにかく何でも記録するんです。建物や路地、河川から飲食店のメニューの値段まで、あらゆることを文章と写真で記録していて、この本の情報量は半端ない。散歩本の理想だと思いますが、普通なかなかここまではできません。

さらに冨田さんが凄いのは、これだけ記録しても、建物が消え、街の風景が変わっていくことに否定的ではないこと。カッコいいなと思います。私はわりと感傷的になるんです。私が散歩して写真を撮り、記録するのは、自分の力で実物を残すことができないから、せめて記録として手元に留めておきたいと思うからです。

もともと地図が好きで、子供の頃からいつも地図を眺めていました。その街の規模や、もし住んでいたらどの辺で遊ぶのかなどが、地図を見ているとわかってくる。行ったことのない街を散歩している妄想をするのが、今でも好きです。

小学生の頃に愛読していたのが帝国書院の『小学生の地図帳』と昭文社の『県別マップル』です。当時、全国の市町村名はほとんど覚えたので、どこの出身の方に会っても、ある程度、その土地の話ができます。それだけに、平成の大合併はやめてほしかったですね。