元エリート官僚の息子殺害…親として「正義スイッチ」が入ったのか

ひきこもり高齢化が進む社会で
井戸 まさえ プロフィール

働いたら、負け

この状態からいずれは抜け出さなければいけないことは当事者が一番わかっている。

ただ、社会の様々な場面で拒絶された経験が多いからこそ、失敗を恐れる。外部とのコミュニケーションは大きなストレスともなり、絶対的な経験値も少なくなるために、他者との関わりの際は緊張度が増し、さらに追い詰められていく。

親が金銭的な支援をしてくれるのであれば、積極的に働く意義を見出すことはできなくなるというのは当然ともいえる。

誰も傷つく体験や苦しい思いをしたくはない。

ある年齢まで仕事の経験がないとなると、単発のアルバイトでも条件の厳しい、つまりは「安くて、キツイ」仕事しかない。

このような状況に至ったのは自分自身より親に原因があるとし、親に対して「働いたら、負け」という気持ちも生まれてくると言う。

 

繰り返すが、ただそれで良いとは思っていない。いつしか終わりが来ることも自覚しないわけではない。抱えきれないほど大きな将来不安を抱えているからこそ、現状から動くことができないのである。

焦燥感は時に暴力となる。そうなれば、もはや家族間で解決しようというのは難しいが、どこに相談したら良いか、相談したらこのように改善するといった見通しも見えないからこそ、相談自体に意味がないと思ってしまう。

事件が起こり中高年の「ひきこもり」に対しての関心が高くなる一方で、ますます見る目が厳しくなっているとも感じる。当事者や家族をさらに追い込んでしまうことが懸念される。