実はにぎやかな深海、さらに海底の下1000mの世界

地球と巨大地震の謎を解く鍵
江口 暢久 プロフィール

世界でも例をみない、巨大地震直後の深海底下、緊急掘削

ところで皆さん、地球深部探査船「ちきゅう」をご存知でしょうか? 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が所有する世界最大の海洋研究船です。

船の真ん中にそびえ立つヤグラは船底から130メートルもあり、船の全長は210メートル、6機の巨大なアジマススラスタと呼ばれるスクリューが黒潮の真ん中でも船の位置を一点に留めることができる船です。2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震とそれに伴うあの巨大津波の原因を探りに行った船でもあります。

地球深部探査船「ちきゅう」

なぜあそこであの巨大地震が起きたのでしょうか。そしてその時、海洋底では何が起きたのでしょうか。津波は時に地震の大きさと関連しないことがあります。

では、何が津波の大きさを決めるのかというと、「地震によってどれだけ海底面が動いたか」、つまり「地震による深海底への影響」なのです。

東北地方太平洋沖地震では、日本海溝へ至る海底斜面が大きく動き、そのためその斜面上にある海水を押し上げたために、巨大な津波が発生しました。

地震と津波が発生した直後に、研究者たちは、今回の地震で断層が動き、海洋底を動かすことによって巨大津波を発生させたと推定し、その地震断層を探る計画を立て始めました。現在、日米には科学掘削船が1隻ずつあります。そのうち、この計画を実行できるのは地球深部探査船「ちきゅう」だけでした。

研究者たちがこの計画で求めたのは、水深7000メートルの海洋底を1000メートル掘削して地震断層を見つけ、それを回収し、そこに温度計測装置を設置するというプランでした。

地震断層は何年経っても海底下に残っていますが、地震ですべった断層に残っている摩擦熱はすぐに測らないと消えてしまいます。研究者たちが測りたかったのは地震断層に残っている地震が起こったときに生じた摩擦熱で、そのためにはすぐに掘削を行う必要がありました。

しかし、これまでこの水深でそんな深い掘削を行った例は世界中を探してもありませんでした。地震発生後すぐに、科学者や技術者はこの未曾有の災害に対して「地球科学が何をできるのか?」ということを真剣に検討し、地震発生の翌年4月には地球深部探査船「ちきゅう」を動かし、この前代未聞の計画をスタートさせたのでした。