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井上尚弥を育て上げた、誰でもできる子育ての秘密

「5-3-2」で諦めない子が育つ
井上 真吾

「ハートのラブ」で接すること

でも私はそんな指導は指導者として失格だと断言します。もし自分がその家の子どもであれば、そんなギスギスとした中でやりたいとは思えないし、やり遂げられないと思うのです。

 

やるだけやって相手の方が1枚上手であれば仕方がない。相手もこの日のために最善の練習をしてくるに決まっているのですから。対策も練る。勝負だから「勝ち」もあれば「負け」もある。最善を尽くして、でも負けることは勝負の世界ではときにあることです。そのときは負けても慰める。実際に負けたときにも、

「よくやった。尚は力を出し切った。つぎに頑張ればいい」

と慰めました。翌日からその敗北を糧にして練習すればいいのです。

逆に子どもですから調子に乗ることもあります。スパーリング大会でいい成績を残して、いつまでも余韻に浸っていると、

「おまえに負けた子は、コンチクショウと思って厳しい練習をしているぞ」

と、厳しい競技だからこそ、あえて厳しくあたったときもありました。

私は2014年度に、その年度にもっとも功績のあったトレーナーに送られるエディ・タウンゼント賞をいただきました。エディ賞の由来となった、エディ・タウンゼントさんはガッツ石松さん、赤井英和さん、井岡弘樹さんら数々の名ボクサーを指導された方です。

エディさんは優秀なトレーナーであり、人格者でもありました。精神論が根強く残った時代に論理的なトレーニングを取り入れ、選手だけでなくトレーナーも指導されたようです。

「リングの上で叩かれて、ジムに帰って来てまた叩かれるのですか? 私はハートのラブで選手を育てるの」

自分の指導も同じです。ボクシングのトレーニングに竹刀はいりません。顔はよく強面と言われますが、「ハートのラブ」で二人を育ててきたのです。